第2話 夢は屯(たむろ)する (その899)
「・・・・・・。」
源次郎は頷くしかない。
「それに・・・。これは、失礼な言い方に聞こえるかもしれませんが、お金だけで解決するものでも無いんですよね。」
里山医師は、この言葉だけは美由紀をじっと見るようにして言う。
「ええ・・・、それも分かっているつもりです。」
美由紀が短く答える。
「そうですか・・・。そのお言葉をお聞きして、心強く思います。」
「よろしくお願いいたします。」
「それと、もうひとつ・・・。」
「はい、何でしょう?」
「以後のご連絡やご相談なんですが・・・。」
「それは、ここにいる吉本咲子さんに直接仰っていただけますか?
当分、病院に貼り付けるつもりですので・・・。」
「じゃあ、お仕事は?」
「その点はご心配なく・・・。」
美由紀は、それ以上は細かく説明をしなかった。
「そ、そうですか・・・。」
「ですから、吉本さんには健太君の看護に専念してもらうつもりでいます。」
美由紀は結論から言った。
「ただ・・・、入院費の精算や治療の基本的な方針などは、ここにいる吉岡が窓口になりますので・・・。」
そう言ってから、美由紀は源次郎を振り返った。
「源ちゃん、名刺にホテルの電話番号と劇場の電話番号を書き入れて、後で良いから先生にお渡しして・・・。」
そう言ってくる。
「あ、はい・・・。」
源次郎は、すぐにその作業を始める。
「それと、先生にこんな事をお訊きするのは筋違いなのかもしれませんが、病院で付添婦さんをご紹介頂けないでしょうか?
やはり、この病院の事情に詳しい方がありがたいので・・・。」
美由紀が里山医師に言う。
「ああ・・・、別に斡旋しているものではありませんが・・・。
いくつかそうした紹介所は知っていますので・・・。」
里山医師は、そう言ったかと思うと、席を立って隣の部屋へと通じるドアを開ける。
「付添婦さんの紹介所の一覧があったよな? それ、1枚コピーして持って来て。」
ドアを半分開けた状態でそれだけを言う。
恐らくは、その先には看護婦がいたのだろう。
隣室は、看護婦の待機室のようなところだった。
(つづく)
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