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第2話 夢は屯(たむろ)する (その88)
「え〜っ!・・・うちの富が連れてきたの?」
女はびっくりしたような顔をする。

「えっ!・・・うちのって・・・・じゃあ、あの人の奥さん?」
今度は、源次郎が驚嘆する。

「いえいえ、そんな・・・奥さんってな、ちゃんとしたもんじゃないんですけどね。」
女は、ぺろりと舌を出した。

そして、互いに、少しの間の沈黙がある。

「それじゃあ・・・」
ふたりが同時に話す。そして、同時に笑い出す。


女の話はこうである。

富という男とは、別に結婚をしているわけではない。ただ、気が向いたら、抱き合う関係だと言う。
ストリップ嬢という仕事をしていると、やはり男なしではやり続けられないのだそうである。
富という男にも、愛情と言うものはない。ただ、男としての魅力は捨てがたい。
兎も角も、女を泣かせる力量は、相当なものがある。それだけでいいのだ、と言う。
互いに、俺の女、私の男、というこだわりが無い。
そこが、いつまでも付かず離れずのいい関係が保てている秘訣だろうと言う。

若い源次郎には、その辺りのことは、何となくしか分らない。
また、分ろうとも思ってはいない。

ところで、と女が話の矛先を変えてくる。
「私は、てっきりミッキーさんのこれだと思ってましたよ。」
また、親指を立てて見せる。
「でも、昨日初めて会ったのだったら、まさに、玉の輿?余程の女泣かせなんだねぇ。若いのに。」
女は、意味ありげな笑みを浮かべる。

「だから、それは違うって言ってるじゃないですか。そんな関係じゃありませんよ。」
源次郎は、また躍起になる。
こうした噂が広がっては、美由紀に申し訳がないと思っている。

「まあ、所詮、男と女。・・・・・でも、ミッキーさんはさすがだねぇ。一目で男を見抜いてるんだ。彼女もこれまた若いのに。くっっっっ・・・。」
女は、押し殺したような笑いをしてから、
「ごちそうさま。じゃあ、舞台に戻る時間だから・・・。」
そう言って、煙草の火を消して、また奥へと消えた。


源次郎は、その後姿を見送りながら、何とも言いがたい想いに囚われる。
昨日、ここへ初めて来て、舞台のリハを見せられた。
そのとき、今の女が舞台にいたのだ。
その舞台を見ていて、あんなことになったのだ。
若さゆえ、だと笑ってしまうには、あまりに悲しい。
今、目の前にいた女は、如何にも「雌」。
源次郎が夢に見るような綺麗で可愛い女性では決してない。
それなのに・・・・・・・。
悔しい、それでいて情けない思いがするのだった。

「所詮は、男と女」
女が言ったひとことが、源次郎の喉仏に突き刺さっている。


(つづく)



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