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第2話 夢は屯(たむろ)する (その849)
手帳の予定事項欄に「サキさんの名刺 500枚」「契約交渉」と書き込む。
それでも、そうして書き込みながらも、源次郎にはなかなか実感が伴ってこない。
それが、どうしてなのかさえ分からない。


「な、何よ?」
そうした源次郎の雰囲気を感じたのだろう。美由紀が訊いて来る。

「い、いえ・・・、別に・・・。」
源次郎はそれ以上は言えない。
言うとしても、どのように言えば良いのか分からない。

「まぁ、ぼちぼちやって・・・。」
「・・・・・・。」
「大丈夫よ。源ちゃんの感性だったら・・・。」
「・・・・・・。」
美由紀は、どうやら源次郎の不安を理解しているような言い方をする。

「ただ、ポイントポイントだけは、その都度、私に教えてね。」
「あ、はい・・・。」


「羨ましいです。」
そうしたふたりを見比べるようにしてサキが言って来る。

「ん? どうして?」
美由紀が問い返す。

「だ、だって・・・。それこそ、阿吽の呼吸って言うんでしょうか? あるいは以心伝心って言ったら良いのでしょうか?
こうして傍にいるだけで、とっても温かくなる感じがして・・・。」
「あはっ! それって、源ちゃんの所為よ。」
美由紀が即座にそう反応する。

「ど、どうしてです?」
源次郎が問い返す。

「私、野球のルールってよく知らないんだけど、ピッチャーが投げて、キャッチャーが受けるんでしょう?」
「ええ・・・、まあ、そうですが・・・。」

「あのキャッチャーって、ピッチャーが代わってもちゃんと受けられるんでしょう?」
「ま、まあ・・・、そうですが・・・。」
「どんなボールを投げてもそれを受けてくれるんでしょう?」
「う~ん・・・、どんな球でもってことは・・・。」

「良いキャッチャーって、そうだって聞いたわよ。」
「ま、まあ、そうなんでしょうけれど・・・。」

「源ちゃん、私のキャッチャーになってくれたんでしょう?」
「・・・・・・。」
源次郎は「うん」とは答えられなかった。
サキの存在がその口を押し留めた。


(つづく)





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