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第2話 夢は屯(たむろ)する (その809)
(ん?)
源次郎は、その場面での習性として、美由紀の足元を見る。
いつもは、ここで靴を履くからだ。

美由紀は、そうした源次郎の視線を意識したのだろう。
足を組むようにして、その先を源次郎の眼に触れるところでゆっくりと揺すった。
「ちゃんと靴は穿いてるわよ」とでも言うようにだ。


「サキさんが来たら、一度、家に戻るから・・・。」
美由紀は、煙草を吸いながらそう言ってくる。

「あ、はい・・・。」
源次郎は反射的にそう答える。

「何だったら、家でご飯食べてから乗る?
それとも、札幌に着いてからにする?
ああ・・・、たまには駅弁も良いわね。」
美由紀は、食事をどうするかを訊いてくる。

「いずれでも・・・。」
源次郎は、どうせ美由紀は既にどうするかを決めているのだろうと思って言う。

「あら・・・・、案外、冷たいことを言うのね。」
「えっ! そ、そんなつもりは・・・。」
「サキさんも一緒なのよ。マネージャーとして、源ちゃんが段取りしなきゃ。」
「・・・・・・。」
源次郎は、この会話で、ある気になっていた事柄を思い出した。

「そ、その・・・。」
「ん? 何?」
「救急車が来たときのことなんですが・・・。」
「う、うん・・・。」

「ぼ、僕がサキさんに付いていくとき、サキさんのマネージャーだからと・・・。」
「ああ、確かに・・・。」
「そ、それって・・・、どういうことです?」
「ん? どういうことって・・・、その言葉どおりなんだけど・・・。
他の意味に解釈できる?」

「そ、それって・・・。」
「源ちゃんは、佐崎プロの主任マネージャーなのよ。
同じプロダクションに所属するタレントの面倒を見るのは当然でしょう?
だから、付いていってもらったのよ。」
「と、言うことは・・・。」
「そうよ。サキさんも、佐崎プロに入ってもらったの。
だから、源ちゃんは、私とサキさんの両方の面倒を見なくっちゃいけないのよ。
分かった?」
「・・・・・・。」
源次郎は、グウの音も出ない。

「ああ・・・、それからね、愛ちゃんもだし・・・。
あの子とは、専属契約にするから、源ちゃん、また詳細な契約書を準備してあげてよ。」
「ええっ! け、契約書ですか?」
源次郎は、契約書と言われたことより、そうした人材を次々と確保している美由紀の動きの早さにただただ驚くばかりである。


(つづく)




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