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第2話 夢は屯(たむろ)する (その799)
「どういうことです?」
源次郎が問い返す。
サキが言った「そのまま」の意味が分からなかった。

「私の代わりに、ミッキーさんが・・・。」
「えっ! つ、つまり、トップバッターもってこと?」
「ええ・・・。」
「そ、そうだったんですか・・・。」
正直、源次郎は意外に思った。

だとすればだ・・・、美由紀は、舞台のハナ(端)とトリの両方を演じたことになる。
本当に、そんなことをしたのだろうか?
でも、美由紀さんならやるのかも・・・。
そんな思いが交錯した。

「それも、ミッキーさんから支配人に申し出られたそうで・・・。」
「・・・・・・。」
源次郎は、美由紀が「何とかするわ」と言った時の顔を思い出す。
多分、その時点で、美由紀はそうするつもりになっていたのだろう。

「穴があったら入りたいです。本当に、申し訳ないと・・・。」
サキは、自分の代役を、今回の舞台の主役というべき佐崎美由紀にしてもらったという思いがあるようだ。
確かに、通常ではありえないことではある。

「支配人は、ミッキーさんのトリの舞台をロングにして・・・と言われたそうですが、ミッキーさんがそれを断られたと。」
「ん?」
「ミッキーさんは、花形です。しかも、今回、初めて北海道の舞台に立たれたんです。
その大スターに、ハナ(端)から出て頂くなんて、支配人もお考えにはならなかったようです。
で、私の舞台を飛ばして、最後のミッキーさんにもう2曲分ぐらいを踊っていただく。
それで、帳尻を合わせよう。
そのようにお考えだったようです。」

「それを、美由紀さんは断ったと?」
「ええ・・・。物理的には可能でも、気持が付いていかない。
まったく異質な舞台になるからと・・・。」
「・・・・・・。」
源次郎は、そうした舞台のことは何も分からないが、中途半端なことが嫌いな美由紀らしい物の考え方・言い方だと思った。

要は、きちんと纏めてある舞台構成に、突如としてそれに何かをくっつける。
そうしたことが美由紀の中では許せなかったのだろう。
だから、まったく独立した舞台として、サキが担当していたトップバッターの部分、つまりはハナ(端)のところでそれを演じることにしたのだろう。
そう思う。

「でも、衣装とか、照明とか、音楽とか・・・、それはどうしたんですかねぇ?」
源次郎は、今度はその点に疑問を覚えた。
サキが倒れたのが2回目の公演のフィナーレである。
それから、次の公演の開始までは僅か1時間。
その間に、そうしたことが準備できるものなのだろうかと、素人考えだが思ってしまう。

「そこがミッキーさんの凄いところなんですね。」
サキは、改めて大きな溜息のようなものを付きながら言う。


(つづく)




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