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隊2話 夢は屯(たむろ)する (その71)
美由紀は涙目で源次郎の言葉を聴いていた。

そして、あの支配人も、源次郎の気迫に押されたのか、口をあんぐりとあけたままで、次の言葉が出てこない。

源次郎は源次郎で、一気にそこまで吐き出してしまった言葉に、自分で驚いている。

3人は、皆、それぞれの思いを抱えたまま、そのままで立ちつくす。黙ったなりで。


その雰囲気をドアの向こうでじっと息を潜めて窺っていたのであろう、先ほど美由紀を迎えに来た化粧担当の女の子がそっと入ってくる。
「あのう・・・・・。お化粧が途中なんですが・・・・ミッキーさん・・・」

彼女の姿を確認したとたん、美由紀が意を決したようにまた奥へ入っていく。
源次郎は、その後姿に深く一礼をする。
2人の間には、何の言葉のやり取りもされなかった。
だが、源次郎は、美由紀に「謝らねば・・」と思っていた。

そうした2人を見ていて、支配人が動いた。
源次郎の肩に手をやって、「そうだよな、ワシが悪かった」とだけ言葉をかけた。
源次郎は嬉しかった。
同じドアから出て行く彼に、これまた深く一礼をする。


客席からは、音楽に混じって口笛が聞こえる。きっと、観客が吹いているのだろう。
大きな拍手も聞こえる。
「踊り子さんには触れないでください。決して触れないでください。」という、あの独特のアナウンスも聞こえる。
そうした客席の様子を音で感じながら、源次郎は、この世界の厳しさ、人間のか弱さを肌に感じる。

先ほどの啖呵は、勿論考えていたわけではない。
そうした場面を想像できた筈もない。
なのに、事前にじっくり練りこまれたような言葉が続いた、と自分で思う。
一体なんなのだ。
あの思いは、どこから来たのだろう。

今までにも、いろんなことで、言いたいことは腐るほどあった。
父との確執、兄への羨望、母への甘え、自分への叱咤激励。
だが、今回ほどに、自分の思いがストレートに出せた記憶はなかった。
どうしてなのだろう?

今回のことは、折角就いた仕事が無くなるかも知れないというわずかな関係はあったとしても、基本的には支配人と美由紀の舞台に関する思惑の違いである。
源次郎の関わる問題ではない筈だ。
極論すれば、どちらにしても、源次郎の現状が大きく影響を受けることではない。
その筈であった。

なのに、あれだけのことを自らの口で言い切ったのである。
今までだったら、思っても、そうやすやすと口にすることはなかったであろう。
それを大声で口にしてしまったのだ。
自分でも驚くしかないのだ。

だが、事は不思議なことに、その源次郎の言葉だけで、美由紀も支配人も、納まったのである。
そのことが、より一層自分の言ったことの大きさを感じさせるような気がするのだ。


(つづく)



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