第2話 夢は屯(たむろ)する (その7)
「サキ!もっと腰を振るんだ!・・・・・馬鹿野郎!・・・何回も同じこと言わせるな!」
初老の男は手厳しい。
それでも、女は何とか一生懸命のようだ。
「はい、そこでターンして。・・・・そうそう、はい、そこで寝て。・・・・はい、オープン。」
源次郎は、息を呑んだ。
リハーサルと言えども、舞台は本番と同じに進められる。
女が舞台の中央で寝転び、片方の足を高く上げる。
当然に、スカートの中が丸見えになる。
源次郎は、それだけで、自分の身体に異変が起きたのを知る。
ポケットに手を突っ込んで、自分のものを生地越しに掴む。
暴発しそうな勢いで、そこからも心臓の鼓動が伝わってくるような気がする。
今度は、両手で、ズボンの上から押さえ込む。
ブリーフに擦れて、さらに勢いがつく。
それでも、目は、舞台を見続けている。
女が、スカートを脱いでいる。
源次郎には、まぶしい光景だ。
白いパンティがライトにはっきりと浮かび上がる。
源次郎は、口に溜め込んだ唾を一気に喉の奥に押し込む。
次に、女は、その下着姿のまま、まるで自室で寛ぐような雰囲気で、舞台を右へ左へと踊り回る。
初老の男の指示に従って、今度は、舞台の左端に寄ったかと思うと、客席側に背中を見せて、両手をパンティの端に当てて腰を大きく回転させる。
3回ぐらい、パンティを脱ぐ仕草をしては、その途中で手を止める。
その都度、客席の方を振り返る。
そして、今度はゆっくりとパンティを脱いで、それを高々と掲げてみせる。
あっ!・・・・もう駄目だ・・・・うっ!・・・・。
源次郎の下腹部に生暖かいものが迸る。
息が止まる。
歯を食いしばって、息を吐こうとする。
ふぅ・・・・・・・・。
気が付けば、ブリーフの中が、そこだけがまるで温泉にでも浸かったような感覚である。
「あぁ、・・・何てことに。・・・・どないしょう?」
動こうにも、少し身体をずらすだけで、その生暖かさが垂れていくようだ。
東京の下宿での自分が思い出される。
金も無いから、女にも不自由していた。
仕方が無いから、古本屋で買ったエロ本を見ながら、自慰をした。
そのときの感覚が、いま、こんな場所で蘇る。
その後に来る空しさだけは同じようである。
それでも、下宿ならば、この後の始末は簡単である。もともと、そのつもりで行うのだから、どうなるかがわかっていてやっていることなのだから、当然と言えば当然だ。
だが、現実の、今は、決して下宿ではない。
そうなることを想定したものではなかったのだ。
ただ、欲望のままに、と言うのは簡単だが、現状を認識していたにも関わらず、ホンマにえらい事になったと思う。
舞台は、まだ女の艶戯が繰り広げられているというのに。
(つづく)
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