第2話 夢は屯(たむろ)する (その66)
「要は、支配人が考えている舞台にしたいって事なんでしょう?」
源次郎が逆襲に転じる。
「まあ、突き詰めて言えばそういうことなんだけれど。・・・・・・ミッキーはまだ若い。お客が何を求めているか、本当のところは分っちゃいない。な、吉岡君も、そう思うだろ?」
支配人は、ねちっこい顔で迫ってくる。
それは、昨日、ここへ初めて来たときに見た顔と同じである。
源次郎に「ズボンを脱いでみろ」と言ったときと、何ら変わっていない。
「支配人、また、その話を蒸し返すんですか?知りませんよ。それを聞いただけで、美由紀さんは降りちゃうと思いますよ。・・・・それは、昨日もちゃんと言った筈ですけれど。」
「そこをだ、吉岡君の力でな、何とかして欲しいんだ。分るだろ?」
「そんなもの、分りませんよ。支配人がご自分の思うとおりの舞台にしたいと思われるのと同じで、美由紀さんは自分らしい舞台でなければやらないと明言しているんです。僕がでしゃばる隙間なんてありゃしませんよ。それは、支配人だって、よく分かっていると思ったんですけれどね。」
「そこなんだ。吉岡君。・・・・君は、ミッキーの信頼が厚い。何でか知らんが、兎も角も一緒にホテルに泊まる間柄だろ?」
源次郎は、驚いた。
確かに、他人から見れば、そうなるのか、と改めて思わざるを得なかった。
一緒のホテルに、しかも、同じ部屋に泊まっている。
それは、事実である。だが、今、支配人が指摘している内容とは、現実が違うのだ。
それでも、ここで、これが事実ですと説明したとて、誰も信じはしないだろう。
そうなのか、周囲は、そう見ているんだということを実感する。
「それとこれとは別の問題です。支配人も言ったじゃないですか?身の回りの世話をするだけの簡単な仕事だって。それを単純に引き受けてやっているだけのことです。美由紀さんがどのように思われているかなんてわかりませんよ。だって、そうでしょう?昨日初めて会っただけなんですよ。」
源次郎は、支配人の提案すらも受け付けない気持である。
「本当に、本当に、昨日が初めてか?・・・以前に、どこかで会ったことがあるなんてことはないのか?」
支配人は、まだ疑っているのだ。
「何度同じ話をすれば納得してもらえるんですか?くどいですよ。」
源次郎は、わざと、交渉決裂にもって行きたかった。
「そこをだ・・・・」
食い下がるように支配人が言葉を続けようとしたとき、外から、人が入ってくる気配がした。
2人同時に、入り口の方向を見る。
ドアが少しだけ開いて、中の様子を窺うようにする男がいる。
その男と、源次郎の目が会った。
「あっ!運転手さん!」
「おう!お兄ちゃん!」
それを契機に、そのドアを開けて、男が3人入ってきた。
まさに、ドカドカドカっていう感じである。
(つづく)
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