第2話 夢は屯(たむろ)する (その619)
「・・・・・!」
美由紀の股間に手を持って行こうとした源次郎の動きが一瞬だが止まった。
そして、すぐに、何事も無かったように先へと進む。
美由紀も源次郎のそうした動きを感じ取ったのか、そこから先は何も言わなくなる。
源次郎も黙っている。
源次郎は東京にいるとき、たった一人だけ女の部分を自分の手で洗ったことがあった。
だが、それは何も愛情からでも好奇心からでもなかった。
単純にその部分の匂いが強かったから、ベッドに入る前に少しでも洗い流しておきたかった。ただ、それだけのことである。
美由紀の陰部からは匂いを感じたことはない。
あくまでも香りなのだ。
恒例となっているこの朝の風呂でもそうだし、舞台が終る度に行う前張りを剥がすときも同じである。
決して淫臭のようなものはない。
だが、さすがに今朝はややいつもとは違う香りだ。
淫臭とまでは言えないものの、やや重たい感じがする。
香りと匂いの入り混じったようなものだと思った。
美由紀自身も、その僅かな変化が自分に起きているであろうことを自覚していたのに違いない。
その理由を含めて、自らそのように申告したことで、それが立証されている。
源次郎は最も敏感なところには触れないようにした。
タオルで洗う場合はそうしたことまでは考えにくいものだが、自分の手をそこに差し入れるとなると、やはりそれだけは避けようとする配慮が生まれる。
まずは陰毛の部分から洗う。
それも決して下から上には手を動かさない。あくまでも上から下である。
そして、次は外陰唇だ。
これも前から後ろに向かって手を動かす。
それが終ると、次は小陰唇なのだが・・・・。
「源ちゃん、中に指入れても良いから・・・。」
それまで黙ったなりでされるがままになっていた美由紀がそう言った。
さすがにその目は他所を向いてはいる。
その一言で、源次郎も意思を固めた。
小陰唇に沿うように指を浅く入れる。
その時、ほんの一瞬だが、美由紀の腰が引けた。
だが、源次郎は敢えて無神経を装った。
そのことには触れない態度で押し通した。
一応は洗い終わった。
少なくとも源次郎はそのように思った。
それで、湯船の縁に置いてあったタオルに手を伸ばそうとする。
「う〜ん・・・・。源ちゃんも、東京で相当に女遊びをしたでしょう?」
美由紀は上げていた足を下ろしながら、睨むようにしてそう言った。
「ど、どうしてですか? そんなに遊んじゃいませんよ。お金もなかったですし・・。」
源次郎は正直な気持を言う。
「だってさ、・・・・。女の身体をよく知ってるもの・・・。」
美由紀は源次郎が手を伸ばしかけたタオルを取って、源次郎にそっと差し出した。
(つづく)
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