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第2話 夢は屯(たむろ)する (その609)
「ミ、ミブ流?」
バスタオルとバスローブを抱えて浴室へ行った源次郎は、そう問い返した。

「生花の流派のひとつ。」
美由紀が鏡の中の源次郎に答える。

「美由紀さん、生花されるんですか?」
「少しはね。似合わない?」
「そ、そんなことはありませんが・・・。
でも、どうして壬生流だと?」
「私も同じ壬生流だから。」
「それも、師範レベルだと?」
「そうね、まぁ、あの年だと、多分師範にはなれていないと思うけれど。」

「えっ?年齢制限があるんですか?」
「ううん、そうではなくて、師範の名前を貰うためには、相当なお金が要るのよ。
何しろ、金看板だから。」
「金看板ねぇ・・・。」
「師範の看板を掲げられるかどうかで、お弟子さんから取れるお月謝が格段に違うの。
だから、皆、無理してでもその名前が欲しくなるの。」

「美由紀さんは?」
「あはは・・・、私は、趣味の範囲を超えちゃあいないわよ。
師範なんて、とてもとても。」


「でも、そんな腕前の人が、どうしてこうしたホテルに勤めているんでしょうねぇ。」
「それは、いろいろと事情もあるんだと思うわ。
でも、彼女は生花に対する情熱は失っちゃいない。
それだけは分るの。」

「だからですか?」
「何が?」
「あれだけのチップ。」
「う〜ん、それもあるかな。
これからも頑張ってねって気持もあるし。」

「凄いんですね。」
「何が?」
「僕らから見ると、単に花を花瓶に入れているだけって見えるんですけれど、やっぱり見る人が見れば、そこらは違うんですねぇ。」
「うん、それはそうね。
でも、私たちの舞台でも同じことが言えるのよ。」
「・・・・美由紀さんの舞台でも・・・ですか?」

「そうよ。単に、裸を見せるだけなら、マネキンと同じじゃない?
それを、見ている男の人に、うっとりさせるだけの色気をどれだけ加えられるかが私たちの勝負どころなの。
そうでしょう?」
美由紀は、そう言って、鏡の中でポーズを取って見せた。

源次郎は、その姿を見て、美由紀の凄さに舌を巻く。


(つづく)




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