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第2話 夢は屯(たむろ)する (その6)
ショートホープを1本吸い終った時、中から大男が顔を出して、
「兄ちゃん、入って来な。」と声を掛ける。

扉を押して中へ入ると、最初に感じたあの匂いが全身を包み込んでくる。
身体に纏わり付くような感じがする。

大男が初老の男に向って、
「兄貴、この兄ちゃんや。そしたら、後は頼んだぜ。」
と言ったかと思うと、源次郎の肩をぎゅっと掴んで、
「これ、俺の兄貴だから、心配すんな。悪いようにはせん。任しとき。」
と言い放って、「じゃあ、な」とそのまま出て行く。

源次郎は訳が分からない。
おいおい、どんな仕事だとも説明を受けてないぞ、それなのに、任しとき、はないやろ。
第一、ここはストリップ劇場なんだろ?そこで、一体、何するんだ?俺に何させようっての?
そのまま、放って行く気なのか?
そう、思いはすれど、言葉にならない。
代わりに、溜息が出る。

兄貴だと言われた初老の男は、源次郎を上から下まで舐めるように眺めていたかと思うと、いきなり、
「おい、兄ちゃん。ズボン脱いでみな。」
と言う。
「いきなり、何を言うか!」と源次郎は思った。
「どうして、ズボンまで脱ぐ必要があるのですか?」
「おいおい、仕事したいんだろ?だったら、脱いでみな。」
「だから、その必要があるのですか、と訊いているんです。」
「当ったり前だろ。物を確かめずに金払う奴がどこにいる。」
「・・・・????」
「ははぁん、お前、どんな仕事か聞かされずに来たな。」
その初老の男は、可笑しげに笑い出した。

源次郎は、ただ腹が立つだけである。

「富の奴から何にも聞いてないんだな。そりゃ、悪かった。この辺りじゃ見かけない顔だし、てっきりやる気で来た者だとばかり思ってたんだ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ、こっちへ来な。話だけじゃ、埒が明かないだろうから・・・・」

初老の男は、源次郎を連れて、楽屋の中を歩いていく。
そして、大きな暗幕が垂れ下がったところを割るようにして、客席へ出る。
辺りは、真っ暗である。

「丁度、今からリハやるから、見物してな。仕事のことは、その後に詳しく話してやるから。」
初老の男は、源次郎を客席の端に座らせる。

まもなく、音楽が鳴り始めて、スポットライトが舞台の中央を照らす。
舞台の袖から、ひとりの女が踊るように出てくる。
薄いドレスのような衣装を着ている。
あまり広くない舞台の上で、行ったり来たりしながら、時には、スカートの裾を捲り上げるような仕草をして見せる。
いつだったか、京都の有名なストリップ劇場で見たのと比べると、何とも貧弱な雰囲気である。

「馬鹿野郎!どうして、そんなチャラチャラとしかできないんだよ。もっと、色気を出せ。もっと腰を使えよ。いつになったら、うまくできるんだ。父ちゃんと布団の中に居るときを思い出してやってみろ。」
大きな声で怒鳴っているのは、先ほどの初老の男である。
いつの間にか、舞台の真正面の席に陣取っている。

舞台の上で叱られているのは、つい先ほど裏口のところで出会った女だった。



(つづく)




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