第2話 夢は屯(たむろ)する (その599)
「み、美由紀さん、ど、どうされるんです?」
源次郎はうろたえる。
この様子だと、すぐにでも道路へと飛び出して行きそうな気がする。
だとしたら、自分はどうすればいい?
それが分らない源次郎である。
やがてトラックのエンジンの音がして、動き始めた。
美由紀は、そのトラックの陰にいるサキの動きをじっと見ていた。
その姿は見えないのだが、トラックの下から足元だけが見える。
それを食い入るようにして見つめている。
富が運転するトラックが走り出して、そして、その陰からションボリとしたサキの姿が現れた。
「よ、良かった。」
美由紀はそう言って、深い溜息をつく。
そして、力が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。
それを見ていた源次郎も、これで飛び出すことはなくなったんだと感じた。
サキが、とぼとぼと歩き始めた。
先ほど、美由紀と自転車で走ってきた道の方向だ。
「源ちゃん、ご苦労様。」
しばらくはそのサキの動きを見ていた美由紀が、ポツンとそう言った。
「はい?」
源次郎には意味がよく分からない。
「ここに来る道で、公衆電話ってなかった?」
ようやく座り込んでいた姿勢から立ち上がった美由紀は、スカートに着いた枯れ草のような細かいゴミを両手で払いながら訊く。
「そんなことを見ている余裕なんてありませんでしたから・・・。」
源次郎は言い訳をする。
「それもそうね。」
美由紀も、来るときのことを思い出したのか、くすっと笑った。
「僕には、一体、何がどうなったのか、さっぱり分りません。
よかったら、分るように説明してもらえませんか?」
源次郎の本音だ。
「そうね。帰る道々、分るように話してあげるわ。
だから、急いで公衆電話を探して。」
美由紀は自転車の傍に立つ。
公衆電話のある方向へそれを押していくつもりのようだ。
「あっ!・・・あの花屋の店先に。」
源次郎が、だるま型の赤い公衆電話を見つけて指差した。
(つづく)
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