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第2話 夢は屯(たむろ)する (その59)
「一緒にベッドで寝よう」と言ったのに、それを回避されたことへの抵抗なのだと源次郎は思う。

自分が予想したよりは、可愛くきた、と思える。


源次郎は、何も言わずに部屋を出る。
「あっ!源ちゃん、どこへ行くの?」という美由紀の言葉が背中を追ってくる。
まっすぐ、クローゼットのところに向う。
昨日、美由紀がシャワーを浴びてバスローブがないと騒いだことがあった。
そのとき、フロントに確認して、クローゼットに掛かっていると言われたのだ。
2枚掛かっていて、そのうちの1枚を使ったのだ。
まだ、1枚、ブルーのバスローブが残っていたのを思い出している。

それを手早く外して、ベッドルームへ取って返す。
美由紀は、まだ同じ姿勢のままでいた。
それこそ、あっという間のことである。
まっすぐ美由紀に近づいて、手にしていたブルーのバスローブを背中から羽織るように着せる。
勿論、手を通していないから、ただ掛けただけの上体ではある。
だが、そこから、源次郎が思い切った行動に出た。

「えっ!」と一瞬の美由紀の声がする。
それもその筈で、掛けたバスローブの上から、源次郎が両手で美由紀の身体を抱きしめたのである。
そして、美由紀の耳元で、
「言うことを聞かないでごめんなさい。でも、ああするのが美由紀さんのためだと思ったんです。こんなことで、美由紀さんにクビって言われたくは無いですから。それだけ、大切にしたいと思っているんです。それだけは、分ってください。」
と優しく、そしてゆっくりと囁くように言う。
その間、動かれないように、両手の中に美由紀の身体をしっかりと強く抱いていた。

驚いた声を出したときには、暴れだしそうなほど両腕に力が入っていた美由紀だったが、さすがに男の腕に強く抱きしめられると、その動きもいつしか消えていた。
そして、源次郎の言葉が終わった時には、全身の力がどこかへ抜け出て行きそうなくらいに緩んでいた。

源次郎は、その両手が感じるものを、美由紀の答えだと理解した。

「さぁ、シャワーから浴びますか?それとも、食事から?」
源次郎は、両手の囲いを解きながら、美由紀にそう言う。

「うん、シャワーは後。先にご飯食べる。フロントへ頼んだら、部屋まで運んでくれるから、メニュー聞いてみて。私は、ミックスジュースを2杯と生卵1個ね。」
美由紀は、素直に源次郎が掛けたバスローブに袖を通しながら言う。

「はい、分りました。でも、そんなもので大丈夫なんですか?」
源次郎が心配すると、
「いつものことだから、それでいいの。それより、源ちゃんはしっかり食べておいてよね。」
と笑いながら言う。

どこかで聞いたようなセリフだなあ、と源次郎は思う。
兎も角も、昨夜の不履行だけはどうやら免責されたらしいことが、源次郎にはとても嬉しかった。


(つづく)



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