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第2話 夢は屯(たむろ)する (その579)
そこへ先ほどの車掌が息を弾ませて戻ってくる。

「高野先生、ご指示のとおり、救急車の手配をいたしました。
指令所の担当はぐちゃぐちゃ言っとったんですが、高野先生のお名前を申しましたら、直ぐに上司の許可が下りたそうで・・・。
いゃあ、さすがに高野先生はご高名で・・・。」
車掌はよく喋った。

「それで、もうすぐよね。小樽駅に着くの。」
高野先生と呼ばれた助産婦はそうした車掌の言葉には触れないで、次の行動を考えているようだ。

「あっ!・・はい、まもなくです。」
「じゃあ、このお母さんを運び出すのに、お手伝いいただけます?」
助産婦は車掌に依頼すると言うより、命令する。
少なくとも、傍で聞いていた源次郎はそのように感じた。

「はい、もちろんです。」
車掌は手にしてきた担架を通路に置いた。


「それで、皆さんはどちらまで?」
助産婦は今度はサキに向かって訊いて来る。

「はい、私たちも小樽で降りますが。」
「ああ、そうなの?だったら、申し訳ないんだけれど、その赤ちゃんと鞄、ホームまで一緒に降りて頂ける?」
「はい、もちろんです。これも、何かの縁ですから。」
サキがそう答えてから、慌てるように源次郎の顔を見た。
「それでいいか?」との確認をしたようだった。
源次郎は小さく頷くことでそれを了承する。


源次郎は、自分の荷物を確認してから、預けていた女の子を受け取ろうと、30代サラリーマン風の男性の方に視線を向けた。
ところが、その男性も自分の席に戻って荷物を持ち出してくる。

「僕も小樽で降りますから。」
その男性は、相変わらず預けた女の子をしっかりと抱いている。
女の子は、どうやらその腕の中で眠っているようだ。

「ああ、そうなんですか? だったら、その子、一緒に降ろしてもらえます?」
源次郎はそう言いながらも、少しだけほっとする。
再度源次郎が抱いたとき、また泣かれるのではないかという不安があったのだ。
だから、その男性がそのままの状態で一緒に降りてくれるのなら、それに越した事は無いと思った。


小樽駅が近づいたのか、列車のスピードが落ち始めた。


(つづく)




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