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第2話 夢は屯(たむろ)する (その559)
「お兄さんも、そのままで直ぐにでも出られます?」
サキが、源次郎の気配を感じて、そうフォローする。
まるでサポートされるのが源次郎であるように錯覚してしまうほどだ。

「あ、はい、・・・・。僕は、このままでも・・・。」
源次郎は自信なさそうにそう応える。

「お荷物、その肩から提げておられる鞄だけでいいんですか?
他にはございません?」
サキがそこまで気を遣ってくれる。
源次郎にすれば、嬉しくもあるが、恥ずかしいことでもある。
立場が逆転してしまっている。

「はい、大丈夫です。」
源次郎はそう答えたが、確たるものがあってのことではない。
「傘は?・・・・・昨日は雨でしたよ。」
サキが後追いをするかのように念を押してくる。
と言うより、源次郎の手に傘がないことを意識してのことだ。
ガサツな女だと見られがちなサキだが、やはりこうしたところに気がつくのは、家庭の主婦を経験していた事が強く作用しているのかもしれない。

「ああ・・・・・。」
源次郎は、サキの後ろ側にあった傘立てから自分の傘を取り出した。
完全に忘れているところだった。


「では、出ましょうか?
先ほど、里山先生にもご挨拶はしておきましたから・・・。」
サキは、時計を見ながらそう言った。

「ええっ!・・・・・もう、そんな事まで?」
源次郎はぼやけた思考の中で、あれから1階で煙草を吸って、トイレに行ってきた僅か20分ぐらいでの行動の差を思い知らされた。

「本当に大丈夫ですか?
何でしたら、もう少し休んでからにされます?
ミッキーさんには、私から電話をしてもいいですし。」
サキが立て続けに気遣いの言葉を投げてくる。

「いいえ、大丈夫です。行きましょう!」
源次郎は、サキに言うとともに、自分自身への檄として胸の中に響かせる。


2人が並ぶようにしてエレベーターの前に立ったとき、病室の方から望月婦人が歩いて来るのが見えた。

「あのおばあさんも、相当にお疲れのようですね。」
サキが源次郎にだけ聞こえるように、下を向いて呟いた。


(つづく)




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