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第2話 夢は屯(たむろ)する (その539)
サキと2人してパイプ式の簡易ベッドを病室に運び込んだ源次郎は、健太の寝顔と、そしてその横の千尋の寝顔を見比べるようにして眺めた。

2人とも落ち着いた状態のようだ。


「じゃあ、サキさんは、そのベッドで仮眠を取ってください。
明日は、少し早いんですが、8時ぐらいの列車には乗りたいと思っているんで、7時過ぎにはお声を掛けますから。」
周囲を気遣って、源次郎はサキの耳元で囁くように言った。

「ええっ!・・・お、お兄さんは?」
サキも聞き取れないような小さな声で返してくる。

「向こうで、そう、先ほどの待合室のソファで。
僕はどこでも寝ちゃうタイプですから。」
サキを安心させるために言った言葉だが、事実、源次郎はどこでも寝られる神経を持っていた。
空腹には結構耐えられるのだが、睡魔には弱かった。
眠たいと思えば、直ぐにでも寝られるのが特技だった。

「・・・明日の朝のことは、ミッキーさんが言われているんですね。」
想像していたより早い目の行動に、サキは、源次郎ではなくて美由紀の意思を感じ取っていた。

「はい、そうですね。」
源次郎も、細かいことはさておき、美由紀の指示であることを鮮明にしておいたほうが良いとの思いで、そう答えた。

「分りました。・・では、また明日。」
サキは、これ以上、子供たちの傍で雑多な会話をするのは好ましくはないとの思いがあるようで、そこで話を打ち切った。


「じゃあ、何かありましたら、僕を起こしてくださいね。」
源次郎は、それだけを言って、病室を後にする。

これで、ようやく、長い1日が終るとの安堵感が体全体を支配し始めていた。


待合室に向かいながら、それでも、なぜかしら背後が気になって振り返る。
もちろん、誰かがいるわけではない。
だが、その振り返った視線の一番奥には、あの赤い公衆電話が、廊下の薄明るい照明の下で、ポツンと光っているのが見える。

「美由紀さん・・・。」
源次郎は、今にもその公衆電話に向かいかける身体を制して、また、廊下を進んでいく。
長い、本当に長い1日の終わりである。


(つづく)




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