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第2話 夢は屯(たむろ)する (その529)
「どうしてだと思われます?」
源次郎は、美由紀がそう言うであろうことは、うすうす感じてはいた。
あの小樽での幾つかのやり取りで、明確に「サキと富は別れるべき」だとは聞いてはいなかったが、どうやら美由紀の経験則からして、それがベターだとの立場で居るらしいことは分かっていた。
だが、それを言われる側のサキがどのように捉えているのかは、またまったく別な次元の話である。


「ミッキーさんは、うちの人のこと、もうひとつ信用されていないんです。」

「で、でも、それは多少は致し方ないことでしょう?
僕だって、まだ富さんのこと、よく分かったとは言えないですからね。」

「はい、そのことは、当然だろうと思います。
ただ、うちの人が私に近づいたのは、健太が藤波家の長男だからではないのか、というのがミッキーさんの疑いなんです。」

「ええっ!・・・・・それは考えすぎだと・・・。」

「私も、ミッキーさんが私のことを心配していただいてのことだとは思いますけれど、そこまでは・・・というのが私の本当の気持です。」

「それは、そのことは、美由紀さんに言われました?」

「はい。」

「それで、美由紀さんは?」

「私の気持は分るけれど、男って、そこまで疑っておかないと、いつ豹変するかもしれないものだから・・・、とおっしゃって。」

「豹変ねぇ・・・・。」
源次郎は、美由紀の口からそうした言葉が出たことに驚きがある。

美由紀は、源次郎に対してなかなか自分の思いを明かそうとはしないが、それでもそのことが「源次郎という男を疑っているから」と感じたことは一度もない。
知り合ってまだ日が浅い男女にごく普通にあり得る「距離の測り方」のひとつだとの印象なのだ。


「うちの人、健太が藤波家の長男だということには触れたことはありません。
あくまでも、私の子供、私が助けなければ、誰も助けられない子供という認識で付き合ってくれていると信じています。」

「そ、そうですよね。
病院で見た富さんの気配り、優しさは、そうした裏の計算があってできるものじゃないと思いますよ。」

「有難うございます。
お兄さんにそう言っていただけるとは・・・。」
サキがまたハンカチを両目に当てる。


(つづく)





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