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第2話 夢は屯(たむろ)する (その46)
取りあえず、このままの格好で部屋の中を歩くわけにも行くまい。
部屋中が水浸しになりそうだ。

源次郎は、美由紀の気配を探る。
静かである。まだ、湯船に浸かっているのだろう。
このチャンスを逃す手はない、と源次郎はズボンを脱ぐ。
そして、バスタオルで自分の下半身を巻く。
不様な格好だとは思うが、今は、緊急事態である。

脱いだズボンからベルトだけを抜いて、ズボンは洗濯物として固めている籠へ入れる。
そして、今度は、劇場から持って帰ってきた鞄のところへ小走りで行く。
中から、新たなブリーフとズボンを取り出して、順に履く。
そして、抜いてきたベルトを、新たなズボンに通す。
きゅっとベルトを締めると、そこで、ようやく気が落ち着いてくる。

バスタオルを戻しに行った時には、湯船から湯をかき回す音がしていた。
そろそろあがるのかも知れない。源次郎は、そう思った。
だったら、ここで待ってやって、身体を拭いてやるのもいいか、などと考える。

そこに源次郎がいるのが分った上での行動のように思えるのだが、美由紀は、ほどなく湯船から上がってくる。
そして、脱衣場のところに出てくる。
少し、恥ずかしそうにする。
その意味が源次郎には理解できない。

「あらっ!服、着ちゃったんだ。ねぇ、どうして、一緒に入ってくれないの?恥ずかしい?」
自分は恥ずかしそうにしているくせに、美由紀はそのように言う。
「ですから、ちゃんと、お手伝いしたでしょう?恥ずかしいとか何とかの問題ではないですし。」
源次郎は、努めて冷静を装う。
そして、バスタオルを広げて、背中の方向から美由紀の身体を包んでやる。
前で併せ持ちやすいように手を回すと、美由紀がその手を握る。
源次郎は、美由紀の身体から電流のようなものが流れるのを感じたが、ここはじっと動かない。
いや、動けない、と言った方が正解だろう。
美由紀の行動、気持が読みきれない。

「ちょっとの間でいいから、こうしてて。」
バスタオルが間に緩衝地帯を作っているとは言え、源次郎は美由紀を後ろから抱く形になっている。
もちろん、そんな意思はない。
だが、じっとしていて!と言われると、さすがに辛いものがある。
源次郎は、目を瞑った。
なぜなら、そのまま前を見ると、鏡の中には、源次郎に抱かれた美由紀が微笑んでいたのだ。
それを凝視していたら・・・・・、源次郎は自分で制御する術を知らないのだ。

ところが、目を閉じたら、人間は他の四感が研ぎ澄まされることをはじめて知った。
両手を伝わってくる美由紀の乳房の感触、胸を熱くする美由紀の体温、そして、鼻腔をくすぐる美由紀の匂い。
源次郎は、男の部分が高まってくるのを覚えた。

「どうしよう!何とかしなくては・・・・」
21歳の青年は、まさに危機一髪の状況に追い込まれた。


(つづく)


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