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第2話 夢は屯(たむろ)する (その459)
「あの点滴って、どれも同じ時間じゃないんですか?」
源次郎は、単純にそう思ったから訊いている。

「あのな、注射のように、人がこちらから押し込むんじゃないからな。
身体の中へ入っていくスピードってのは、その子の身体が決めるんだ。
だから、よく注意しておいてやらないと、気がついたら空気を送り込んでいたってことにもなりかねん。
そうなったら、後で苦しむのは、その子供なんだ。」
富は、決して専門用語や横文字を使っているのではないのだが、聞いている源次郎には凄く専門的なことを言っているように思える。

「富さん、どうしてそんな事まで知っているんですか?
ほんと、凄いなあって思いますよ。」
源次郎は素直に言う。

「だから、言ったろ?
向こうの病院にいるときに覚えたんだって。」
富は、なぜかしら、それ以上のことを聞かれるのが嫌だったようである。
少し怒ったような言い方をした。


「お2人とも、少し静かにしてあげてくださいね。」
病室の奥から出てきた看護婦がそう声をかける。
入院している子供たちの様子を順番に確かめて歩いているようだ。

その看護婦が千尋の所へと寄る。
呼吸の状態を確かめているようだ。ペンライトの小さな明かりだけが見える。

「大丈夫ですか?」
気になって、源次郎が声を掛ける。
もちろん、注意されたばかりだったから、小さな声である。

問われた看護婦は、黙って首を大きく縦に振る。
そして、にっこりと笑ってみせる。
それから、ペンライトの明かりを消す。

最後に健太の所へとやって来る。
「まぁ、綺麗にして貰って、気持良さそう。」
看護婦は、健太の身体を見て、そう言った。
まだ、パジャマの前がはだけた状態のままだった。

「じゃあ、お大事に。
何かありましたら、お手元のナースコールボタンを押してくださいね。」
その看護婦は、そう言ってから、横に立てられていた点滴の装置をゆっくりと押しながら部屋を出て行った。


「後、足の部分を拭いてやってから、サキを迎えに行こうや。
時間もそろそろだろうし。」
富はそう言いながら、今度は健太の足を拭き始めた。

源次郎には、そうされている健太の顔が、どことなく笑っているように思えた。


(つづく)




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