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第2話 夢は屯(たむろ)する (その45)
美由紀が泣いている。
そして、美由紀の身体も悲鳴を上げている。泣き叫んでいる。

源次郎は、ただ黙々と美由紀の身体を洗ってやる。
もちろん、こうした経験がある訳ではない。
女性との性交渉の経験はあっても、こうした場面は想像できなかったし、出くわしもしなかった。
だが、源次郎には、まったくと言っていいほど、違和感はない。

背中が終わって、今度は、前に回る。
美由紀は、顔を見ようとはしない。
それでいい、と源次郎は思う。
会話など必要もない。
今は、ただ、ゆっくりとしていて欲しい。
そのために、自分がいるのだと思っている。

一度、石鹸を付け直して、再度、泡立てる。
そうして、また、両手でその泡を掬うようにして、身体を洗っていく。
喉、首、肩、胸、腹部。
そして、腰の部分まで来たとき、美由紀がその両足を広げる。
源次郎は驚きもしない。
素直に、その両手を美由紀の女性自身にそっと宛がう。
とりわけ、先ほど見た、バタフライが当たっていた部分は、優しく撫でるように触れる。
もちろん、同じ感覚になることはできないのだが、その部分がどのような状況にあるのかは、よく分かっているつもりだ。

そこまで行くと、今度は美由紀が源次郎の動きを制するようにして、ゆっくりと立ち上がる。
「この方が、やりやすいでしょう?」
源次郎は、答えない。
何かを言葉にしようとすると、それだけで、何かが壊れていくような気がするのだ。
その代わりに、陰部から続く大腿部、膝、足首・・・と洗う作業を黙って続ける。
その間、美由紀の片手が、源次郎の肩に添えられていることも気付いていない。

洗い終わると、源次郎は、湯船の湯を掬って、何度となく美由紀の身体を流しに掛かる。
優しい湯玉が、美由紀の肌を滑るように転がり落ちていく。

「ありがとう。もう、いいわ。」
「頭はどうされます?髪も洗いましょうか?」
美由紀は少し考えたが、
「今日は、やめとく。明日、やってくれる?」
と言う。
源次郎は素直に「わかりました」とだけ答えて、手で、湯船を指して、「どうぞ」と勧める。

美由紀も、何も言わずに、源次郎の指示に従って、身体を湯船に沈める。

それを確認した源次郎は、そのまま風呂場を出て、脱衣所に立つ。
鏡に映った自分は、今までに見たことのない顔をしていた。

新たなバスタオルを棚から出して、鏡の前に置く。
それにしても、源次郎の下半身が重たい。
湯を一杯に吸い込んだズボンの扱いを、ようやく考えられるようになった源次郎である。


(つづく)



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