第2話 夢は屯(たむろ)する (その42)
源次郎は、息を呑んだ。
それは、美由紀の裸体の美しさであるとか、女の色気とかではない。
若くて、綺麗で、可愛い女の子の全裸体が目の前にあるのだが、その美由紀の身体からは、そうしたものは伝わってこない。戦った後の、まさに傷だらけの身体がそこにあったのだ。
美由紀の陰部には、肌色の絆創膏のようなものがべったりと貼り付けられている。
打ち合わせに行く前に見たあの美由紀の身体ではないのだ。
今でこそ、ストリップと言えば、全裸は当たり前なのだが、60年代の当時では、まだ陰部を見せることは禁止されており、万一にもそれを見せる行為を行ったとすれば、当然に警察の手入れを受けることになったのである。
あの有名な一条さゆりなどの出現によって、次第に全裸(全スト)が主流になっていくが、それは70年代になってからで、源次郎が小樽にいた頃は、俗に言う「前張り」(バタフライ)を女性器に貼り付けることが当然とされた時代であった。
「源ちゃん、これ剥がして。自分でやると、我慢できないの、痛くって。」
美由紀は、悲しげにそう言う。
源次郎は戸惑った。
「剥がせ」と言われても・・・なのである。
確かに、見たことはある。大阪にいたまだ高校生のとき、友達と誘い合って、京都の劇場へ行った。
そのときの踊り子さんは、皆、これと同じようなものをしていた。
その上から、わざと陰毛のようなものを付けて挑発するようなものまであった。
その下はどうなっている?という思いで、それこそ穴が空くほどにその部分を睨んだものだった。
だが、それは、あくまでも客席から見たものである。
それが、今は、客席でないところで、目の前にある。
しかも、「それを剥がせ」と言われているのである。
面食らうのも無理はない。
そんな源次郎の思いとは関係なく、美由紀は、湯船の端に片足を上げる。
そうした方が、剥がしやすいと考えているのだ。
経験からなのだろう。
「早くしてよ。寒いんだから。」
美由紀は、動きが止まった源次郎に対して、そう言って急がせる。
「あのう、・・・・どうすれば・・・・・?」
「取り敢えずは、そのズボン脱いできてよ。そのままじゃ、濡れちゃうから。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ねぇ、早くして。ホント、寒い。」
美由紀の身体には鳥肌が立っていた。
大きくはない乳房の先にある乳首も硬く立っている。
源次郎は、慌ててそこを出て、脱衣所でズボンを脱ごうとしてハタと手が止まった。
そうなのである。
その下には、何も履いていなかったのを、今になって思い出す。
(つづく)
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