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第2話 夢は屯(たむろ)する (その399)
「じゃあ、その富井さんって方とご一緒なんじゃ・・・・・」
そこまで言いながら、主任看護婦の言葉が立ち止まる。

「って、こともないのか。
この様子じゃ、抱きかかえないと無理だものね。」
カルテではないようだが、やはり入院しているひとりひとりについての情報がそのバインダーの中の台帳には書かれてあるようだ。

鬼瓦のような顔が一段と怖い顔になっていく。
いろんなことを、その経験の通して考えているようだ。


「ねぇ、里山先生に連絡取れない?」
奥のほうで別の作業をしていた先ほどの若い看護婦に言う。
「お食事だと聞きましたから、多分、熊っ子だと思うのですが・・・。
電話してみましょうか?」
「ああ・・・」
そう言ったものの、その主任看護婦は自らが電話を掛け始める。
メモなども見ないでダイヤルしているのだから、その番号が頭に入っているのだろう。

ダイヤルをし終わってから、受話器を耳に当てる。
そして、その格好のまま、
「あなたのお名前は?」
と源次郎の目を見て訊いてくる。

「はい、吉岡と言います。里山先生はご存知です。」
手短なほうが良いと考えて、それだけを答える。


店の従業員が出て、里山医師が行っているのかどうかの確認から入る。
どうやらいるようだ。
「急ぎだから、すぐに呼んで」と鬼瓦の主任が語気荒く言う。

そこからやはり少し待つことになる。
その間、僅か10秒から15秒程度だと思われたのだが、主任看護婦は机の上をボールペンでコンコンコンと突付いていた。


「あっ!先生!・・・和田です。お食事中に申し訳ございません。
実は、408号Cの藤波健太君のことなんですが、入院手続きを取られた富井さんという方とともに姿が見えないのですが・・・・・。」
と電話の趣旨を説明する。

それからは、里山医師が何かを言っているらしく、彼女はただ受話器を耳に押し当てたまま、何度か頷いただけだった。
「はい、ここに。・・・・・じゃあ。」
それだけで電話を置く。

「先生、すぐに戻られるそうです。
それから、富井さんの持っておられた荷物のようなものはご存知ですか?」
主任看護婦が源次郎に訊く。

「そうですねぇ、これくらいの黒いバッグを持っていたと・・・。」
源次郎は両手でそのバックの大きさを示して答える。
「じゃあ、そのバッグがベッドのところか、ロッカーにあるかどうかを確かめましょう。」

そう言うのと同時に、源次郎の体を押すようにして廊下へと出る。
里山医師もまずはそれを確認しろと言ったのかもしれない。


(つづく)




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