第2話 夢は屯(たむろ)する (その328)
本当にすぐ近くだった。
多分50メートルぐらいだろう、病院の前からすると。
看板代わりになっているポストのすぐ奥に、郵便局の入り口はあった。
ごく普通の民家ぐらいの大きさしかない、規模の小さな郵便局だった。
傘を畳んで中に入ると、結構混雑している。
と、言っても、来ている人数は10人程度なのだが、何しろ狭い窓口だから、すごく人がいるように感じる。
一度入った事のあるあの小樽の商店街にある郵便局の1/3ぐらいだ。
どうやら窓口はふたつだけらしい。
ひとつは、預貯金や保険の取扱窓口で、もうひとつが切手を売ったり、郵便を受け付けたりする窓口となっているようだ。
並んでいる人達の持っているもので、そう判断する。
「両替をしてもらえるのはどちらなのだろう?」
こうしたことにも疎い源次郎である。
仕方が無いから、たまたま傍にいた中年のおじさんに訊いてみる。
「両替って、どちらに並べば良いんでしょうか?」
訊かれたおじさん、源次郎をチラッとだけ見て、
「どっちでも、空いているほうでやってくれるよ。」
どうやら、地元の人で、その辺りは融通が利くとでも言いたかったようだ。
「有難うございます。」
源次郎は、そのおじさんに礼を言ってから、両方の窓口に並んでいる人数を見比べる。
その結果、おじさんの後ろに並ぶことにした。
7〜8分で源次郎の順番が来た。
「電話を掛けたいので、これを10円玉に替えてもらいたんですけれど。」
そう言って、千円札を2枚出す。
「ああ・・・電話ねぇ。それは本当は隣の窓口なんですよ。
まぁ、でも、いいですよ。
これからは、あちらの窓口でお願いしますね。」
50歳手前と思われる女性局員は丁寧にそう言ってから、席を立って、すぐ横の窓口の担当者に何事か言っている。
言われた担当者は30歳ぐらいの男性局員だったが、すぐに自分の席の引き出しの様なところを開けて、何かを取り出し、源次郎が渡した千円札と引き換えた。
先輩後輩の力関係がありそうな雰囲気だ。
それを受け取って戻ってきた女性局員が、それらを青色のトレーに載せて、カウンターに空けられた小さな窓のようなところから差し出してくる。
10円玉50枚をひとつの棒状に紙で包んだものである。
それが全部で4本ある。
「確かめてくださいよ。」
中から、女性局員が声を掛けてくる。
「はい、有難うございました。」
源次郎は、そう言って、その棒状の包みを握って、その場を離れた。
確かに、融通を利かせてくれてはいる。
ここら辺りが、小規模の郵便局の特徴なのかもしれないと思う。
これが、大規模な都市部にある局だと、こうはしてくれない。
もう一度、別の窓口に並び直すことになる。
ところで、実際に2000円分の10円玉となると、随分と重いものである。
10円玉の枚数で200枚。
今までにも、これだけの10円玉を一気に手にしたことは無かった。
さて、これをどうして持って歩くかである。
鞄を開ける。
とてもじゃないが、ポケットの小銭入れに収まりはしない。
だから、鞄に・・・と思ったのだが、そこから出てきたのが、あの初老の婦人がくれたきんちゃく袋であった。
源次郎は、にっこりとする。
(つづく)
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