第2話 夢は屯(たむろ)する (その319)
「揉めたりはしてませんでしたか?」
源次郎は、そうなって当たり前ではないか、と思っている。
「電話口でですか?
それは無かったですよ。お2人とも、大人なんですから。」
里山医師は、どうしてそこまで気になりますか?というような顔をする。
「だったら、良いのですが・・・・・。」
源次郎は、ほっとする反面、里山医師が言った「大人なんですから」という言葉に何かしらの引っ掛かりを感じる。
「ところで、これはお父様の方から言われていた事なので、ここで改めてサザキさんの代理人である貴方に、お願いしたい事があるんです。」
里山医師が自分の椅子の向きを変え、丸椅子に座っている源次郎と向き合う形になる。
「はい、何でしょう?」
そう言われた源次郎もやや構えるようになる。
そりゃあ、そうなるだろう。
この里山医師が「お父様」というのは、当然に藤波氏のことである。
法律的にも親権を持った、名実共にあの子の父親である。
その父親から言われたことを伝えると言うのだから、源次郎も構えざるを得なくなる。
「藤波さんからのお願いだと受け取っていただいて結構ですが、今後のこの病院との窓口を是非サザキさん側でやって頂けないかと。」
里山医師がじっと源次郎の目を見てくる。
前屈みになって、迫るような感じもする。
「と・・・・と、言われましても・・・・。」
源次郎は、言葉に困る。
第一、今の自分に、そうしたことを言われても、判断できる立場ではない。
それをこの里山医師は分ってくれているのだろうか?
「ですから、これからお話しすることをですね、サザキさんにお伝えいただいて、その上でご了解を頂けるのかどうかのお返事をお願いしたいのですよ。」
どうやら里山医師は、源次郎も知らない今回の経緯を知っているような気がする。
どうして、親戚関係でもないサキの子供の手術費用を美由紀が支援する事となったのか。
そして、どうして藤波氏がそうしたことを前提に、窓口を任せたいと言って来るのか。
いずれの問題についても、源次郎は明確な答えどころか、それなりの情報すら与えられていない。
ここは、ただ黙って里山医師の言うことをしっかりと聞くだけ聞いて、後は、またその内容を電話ででも美由紀に報告して、その判断を仰ぐ事になる。
「なんだか、よく事情が飲み込めませんが、先生がそのようにおっしゃるのであれば、お聞きした上で、佐崎にはちゃんと伝えます。
ただ、僕自身が、そのあたりの事情がよく分っていないので、できるだけ詳しくお話いただけますか?」
源次郎は、一定の覚悟を決めた代わりに、自分の中で埋められていない疑問についても、できるだけこの場で埋められたら、と考えていた。
「先ほども申しましたが、健太君の手術は最低2回が必要だと思っています。
その結果によれば、さらに3回目もあるかもしれません。」
里山医師は、手術のことから話し始めた。
(つづく)
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。