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第2話 夢は屯(たむろ)する (その24)
近くで見ると、本当に綺麗な肌である。

東京でも、何人かの女の裸を見たが、これだけきめが細かい肌は記憶が無い。
そんなことを思いながら、顔、首、襟・・・と順に見ていく。
両手は後ろで、組んでいる。
もちろん、触るつもりなどないのだが、万一にも指先が当たったら・・・と思っている。

耳の後ろの髪の生え際に、まだ塗れていないところがあった。
「ここんところが・・・」と、後ろで組んでいた手を前に回して指差す。
すると、美由紀が化粧壜を源次郎に手渡す。

「僕が塗るんですか?」と驚いて訊く。
美由紀はただ黙って、指摘された部分を源次郎に向けるだけである。

源次郎は、これも仕事だと覚悟した。
乳液を手にとって、それを両手を擦り合わせるようにして温める。
最初は、冷たかった乳液が、源次郎の体温で温かくなる。
それを適量だと思えるだけ右手にとって、それを美由紀の身体に塗っていく。

美由紀の身体は冷たかった。
シャワーを浴びてから、しばらくはバスローブだけを羽織っていたのだから仕方がないのかもしれないが、それにしても冷たい身体だと感じる。
「寒くはないですか?身体、冷たくなってますよ。」
源次郎は、あまり感情を入れないように意識しながら、そう言った。

「大丈夫。これぐらいしなきゃ、勤まらないわよ。・・・・はい、その後は?」
美由紀は、胸から下もチェックせよと言っている。
源次郎は、手に残った乳液を垂らさないようにしながら、美由紀の前に片膝を付く。
美由紀の身長は155センチぐらいであろう。小柄なのだ。しかも、部屋ではヒールを履いてはいない。
その身体の胸から下を見ようとすれば、当然にそうした姿勢とならざるを得ないのだ。

源次郎は、可笑しな自信が沸いていた。
先ほど、全裸の美由紀に近づかれたときには、一体どうなるのか、といった不安があった。
だが、こうして乳液を手にとって、その薄い膜が間にあるとは言え、直接その肌に触れても、自分には何ら変化が起こらなかったのだ。
綺麗な肌だとは思うが、劇場で見たリハの時のような感情は少しも起こらなかった。
だから、これからどの部分を見ようが、触れようが、大丈夫だという自信が生まれたのだ。

美由紀の胸はそれほど大きいものではない。今風に言えば、Dカップぐらいだろう。
ただ、その形は綺麗なものだった。乳首がツンと上を向いて、若さがそこにあるような勢いがある。
ウエストも細くくびれている。
へそも縦にやや細長くあって、細い身体とのバランスを保っている。
腰骨はその絞られたようなウエストから、急に大きな花が咲いているように広がった曲線を描いている。
恥骨の辺りからは、本当に薄い陰のような陰毛が小さくまとまって生えている。
そこまでは、塗れていない箇所は見つからない。

そこまでチェックが終わったのだ、と思ったのか、美由紀が今度は、ぴょんと飛び上がって、反対側を向く。つまり、源次郎に背中を見せるように立つ。
「背中は塗れてない所があると思うから、しっかりと見てね。」
美由紀は、そういいながら、遠くに見える鏡の中を見つめている。

源次郎は、そこで、一旦、深呼吸をする。
美由紀の肌に自分の息がかかるのを避けようと、できるだけ呼吸を浅くしていたのだ。

「あはは・・・。源ちゃん、そんなに緊張しなくってもいいわよ。ただね、私は女の身体をした商品なんだから、傷つけることがないようにだけ注意してくれれば、それでいいのよ。決して、女の子じゃないのよ。女の子として扱われると怒るからね。」

この美由紀の言葉には、十分な説得力がある。
源次郎は、そう思った。


(つづく)



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