第2話 夢は屯(たむろ)する (その199)
「おじさん、ラーメンふたつ。」
道端に無造作に置いてある古ぼけた椅子に2人は腰を下ろす。
「あっ!ひとつは大盛りにして!」
美由紀は、本当にはしゃいだ声で言う。余程、楽しいのだろうか。
待っている間、美由紀は身体を寄せてくるばかりである。
源次郎の腕に自分の両腕をピッタリと絡ませるから、当然のように源次郎は美由紀の乳房を左腕に感じる。
「ねぇねぇ、あのおじさん、真面目な顔して作るでしょう?ああして作っている間にどうでもいいような話をすると、すっごく怒るんだよ。」
そう言いながらも、美由紀はじっとそのおじさんの手の動きを眺めている。
「お待ち!」
オヤジさんはそう言って、ラーメン鉢ふたつを並べて出した。
「源ちゃん、取りに行こ!ここは、待ってても運んでこないから、自分から取りに行くの。」
美由紀は、ようやく源次郎の腕を離して立ち上がる。
「大盛りはこっち。源ちゃんの分だからね。」
2人は、熱いラーメンを溢さないようにそろりそろりと持って椅子に戻る。
椅子といっても、大人2人が座ればそれで一杯になるような縁台のようなものである。
その中央にラーメン鉢をそろりと置いてから、
「こうして食べるのがここの流儀。・・・・・・だよね!」
美由紀はそう言ったかと思うと、スカートの裾を翻して縁台を跨ぐようにして座った。
「姉ちゃん、よ〜く知ってるね。何度か来てくれてるのかな?」
オヤジさんは、機嫌好さそうにそう言った。
オヤジさんは機嫌がいいかも知れないが、源次郎は不愉快だった。
「み・・・」美由紀さんと言いかけて、何とか喉で止められた。
「そんな格好で食べるんですか?」
「そんなところで突っ立ってないで、早く座って食べようよ。はい、お箸。」
美由紀は、源次郎の不愉快さを知っているかのように、少し照れるようにして割り箸を差し出した。
源次郎も同じようにして、向かい合わせに縁台を跨いで座る。
美由紀は、もう食べ始めている。
だが、その格好を見ると、確かにスカートで隠れてはいるが、その下を想像するだけで、ハラハラする。
その格好だと、縁台には美由紀のお尻が直接触れているはずである。
先ほど、一旦実家に寄ったときに悪戯っぽく見せたあのパンツで座っているのだ。
「早く食べないと、伸びちゃうよ。」
美由紀は、源次郎をせかす。
だが、幾らせかされても、源次郎はなかなかラーメンに集中できない。
オマケに猫舌だから、余計にである。
一方の美由紀は、あっという間に鉢を空にした。
熱いラーメンなのに・・・・と思うが、さすがに一気に胃の中が温まったと見えて、美由紀は赤い顔をした。
その赤い顔の中で、目だけがなぜかトロンとした雰囲気を見せている。
源次郎も何とか大盛りのラーメンを平らげた。
確かに、空いていた腹も一杯になった。
「兄ちゃん、大盛りラーメンは100円だからね。」
オヤジさんが言う。
「女の子の分は俺のおごりだ。」
美由紀が舌を小さくペロッと出した。
(つづく)
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