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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1253)
源次郎は頭を横に振る。
そう、一瞬、スパイ映画を思い出したからだった。

昭和40年代と言えば、東西冷戦時代である。
そうした時代背景もあったのだろう、アメリカのテレビ映画に「スパイ大作戦」というのがあった。
もちろん、フィクションなのだが、アメリカでの人気を受け、日本でもテレビ番組として毎週放送され、かなりの高視聴率を取っていた。
そう、「おはようブリックス君」で始まるあのスパイ映画である。

その「スパイ大作戦」には、シナモン・カーターという元モデルの美人スパイが登場する。
唯一の女性メンバーなのだが、看護士の資格も持つなど頭が切れることから、サブリーダーの役割を果たすことが多かった。
そして、その美貌と話術で作戦相手の人物に取り入るなど、作戦を遂行する上でも重要な役割を果たしていた。

その美人スパイと美由紀を重ね合わせていたのだ。
頭が切れること、そして美人であること。それが理由だろう。

(そ、そんな訳ないよなぁ~・・・。)
源次郎は、そう自嘲する。
フィクションと現実が混在するはずはない。


「ああっ、そ、そうだ・・・。」
源次郎は、そう言うことで現実を取り戻す。

その美由紀が言っていた。
「代書屋って知ってるんでしょう?」とだ。
つまりは、そこを使えと言っているのだ。

「う、う~ん・・・。」
だが、源次郎は、その代書屋を知らない。使ったこともない。
ましてや、ここは小樽である。どこにその店があるのかも知らない。

源次郎は椅子から立ち上がる。そして、階段へと向かった。
階下へ降りるつもりだった。


「あ、はい、何か?」
源次郎が降りてきたのを見て、シェフが声を掛けてくる。

「電話帳、ありますか? 職業別が良いんですが・・・。」
源次郎が問う。あるだろうとは思っていたが、一応はそう切り出す。

「あ、はい。ここに・・・。」
シェフがカウンターの下から電話帳を取り出してくれる。

「ちょっと上に持って上がっても良いでしょうか?」
「あ、はい、結構です。どうぞ・・・。」
こうしたやり取りがあって、源次郎は分厚い電話帳を抱えるようにして再び階段を上がる。


(つづく)



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