第2話 夢は屯(たむろ)する (その1229)
(んんん? ・・・・・・・・・。)
源次郎が不安に思うのはある意味で当然である。
何の話なんだろう? とだ。
もちろん、「何の話ですか?」とは訊けない。そんな度胸はない。
「あ、はい・・・、もちろんです。誰にも言いません。」
愛子がはっきりとそう応じる。
まるで忠誠を誓う騎士のように胸に手を当てている。
「だから、そう言うこともあってのことなのよ。」
「そ、そうだったんですか・・・。な、なるほど・・・。」
女の子ふたりだけの会話が続く。
「あっ、この筋を左に・・・。」
あるところまで来たとき、愛子がぽんと前に出るようにして言う。
そして、それと同時に美由紀の腕を取るようにする。
「ああ・・・、こっち?」
そうは言ったものの、美由紀は指定された筋の位置を確かめるように周囲に視線を走らせる。
この商店街は美由紀が育った場所である。
学校の位置は分からないが、恐らくはこの商店街を通学路にしていたに違いない。
そうした美由紀にとっては、その筋がどこに通じていて、どんな店が並んでいるかが分かっていたのではないか。
「ここなんです。」
程なくして、愛子がとある店の前で立ち止まる。
もう少し行けば、大きな通りに出るところだ。
車が走っているのがすぐ近くに見える。
「あら、ここって?」
美由紀が驚いたように言う。
周囲の古い建物とは違い、その店だけが真新しいように見えたからかもしれない。
表には横文字で書かれた洒落た看板が掛かっていた。
「ロシア料理を出すお店なんですよ。」
愛子がそう言ったとき、中から店のドアが開いた。
「いらっしゃいませ。お待ちいたしておりました。どうぞ。」
中から出てきたのは、背の高い外国人だった。
その外国人が、流暢な日本語で言ってくる。
「ああ・・・、サーシャ、こんにちわ。今日はよろしくね。」
愛子がにっこり笑ってそう応じる。
どうやら、顔馴染みのようだ。
「2階にお席、ご用意させていただきました。」
背の高い外国人が階段へと案内する。
これまたお洒落な螺旋階段である。
(つづく)
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