第2話 夢は屯(たむろ)する (その1219)
「はいはい、すぐですよ。」
おばちゃんは奥から声だけで答えて来る。
源次郎は小銭入れを取り出した。
いくらなのかは聞いてはいなかったが、たかが紙10セット、つまりは20枚の用紙である。
そんなに高いものだとは思えなかった。
50円もあれば釣りが来る。そう思っていたからだ。
「はい、ここに10セット・・・、確かにお入れいたしましたからね。」
奥から戻ってきたおばちゃん、そう言いながら、源次郎にその箱の中身を見せるようにしてくる。
「ああ、ありがとう・・・。おいくらです?」
「ええっと・・・、すみませんね、250円になります。」
「250円? ・・・じゃあ・・・、これで・・・。」
正直、源次郎は高いと思った。
10セットで250円ということは、1セット25円という計算になる。
タバコが1箱80円の時代である。
それと比較すれば、如何にその用紙が高いかが良く分かる。
それでも、ここまで来て、「じゃあ買うの止めます」とは言えない。
小銭で250円を支払った。
「で、申し訳ないんですが・・・、領収書もらえませんか?」
別に、高いと思ったからではなかったが、源次郎はそう付け加える。
金銭感覚に目覚めたというのではなく、あくまでもこれは仕事に使うものだからとの意識からだった。
「あ、はい・・・、領収書、ですね・・・。」
おばちゃんは、そう言って、いつも座っているであろう席に戻って腰を下ろす。
「じゃあ、お兄さん、さっきの分も一緒に書いておきましょうか?」
おばちゃん、そう付け加えてくる。
さすがは商売人。そうした点は気が利くようである。
「ああ・・・、じゃあ、そうしてもらえます?」
源次郎もそう応じる。
「お名前、どうしておきましょう?」
「う~ん・・・、じゃあ、このあて先でお願いできますか?」
源次郎は、そう言って自分の名刺を取り出す。
もちろん「佐崎プロモーション企画」のものである。
この調子なら、これから先も、ここでいろんなものを買うことになるかも知れないとの思いもあった。
「ああ、はい・・・、承知いたしました。」
おばちゃん、源次郎の名刺を横に置いてあて先を書き入れてくれる。
「では、これで・・・。」
おばちゃん、領収書と源次郎の名刺を重ねるようにして手渡してくる。
「名刺、お渡ししておきます。また、お世話になると思いますので・・・。」
源次郎は、そう言って領収書だけを受け取ることにする。
(つづく)
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