第2話 夢は屯(たむろ)する (その1209)
ゴシップ週刊誌的に言えば、まさに「女の生き血を吸うヒモ」だろう。
もちろん、源次郎自身には、そんなつもりは無い。
例え身体の関係になっているとは言っても、それは美由紀にそれを求められたからであり、その美由紀の稼ぎを当てにして好き勝手をしている訳ではない。
だが、それは、あくまでも当事者としての言い分で、周囲はそうは見ないだろう。
現に、この小樽でもそうした目で見られている。
だからこそ、こうして遊んでいるような時間があっても、誰も文句を言っては来ないのだ。
美由紀に遠慮があるのだろう。
それでも、この状態が東京で通用するとはとても思えない。
ましてや、現在の美由紀を支えてきたプロの集団である。
源次郎の立場を容認してくれることは無いだろう。
必ず敵視される。そう、邪魔者扱いだ。
(み、美由紀さん、そのことが分っているのだろうか?)
源次郎は疑問に思う。
もし、そうなれば、つまりは東京で源次郎が排除されるようになれば、その源次郎を連れてきた美由紀の信頼度にも傷が付くのではないか。
そうなれば、今のトップスターの地位を維持するのにも支障が出てくるのではないだろうか。
源次郎は、ますます萎縮する。
と、その時だった。奥に通じるドアが開いた。
源次郎は、その気配に振り返る。
「お兄さん、ミッキーさんがお呼びです。」
そう声を掛けてきたのは愛子だった。
顔だけを覗かせるようにして言ってくる。
「ええっ! こ、来いって?」
源次郎は、初めてのことに戸惑いを隠せない。
「あ、はい・・・。メイク室におられます。」
愛子はそれだけを伝えると、そのまままた奥へと戻っていく。
美由紀は、基本的には、源次郎が劇場の奥へと入っていくことを嫌っていた。
「ここで待っていてね」と、自分の靴をここに置いていくのだ。
暗に、「これ以上は楽屋に踏み込まないで・・・」と言われたような気がしていた。
それなのに、「呼んでいる」と言われたのだ。
源次郎は、とっさに昨日のことを思い出していた。
そう、サキが舞台で倒れたときの場面をだ。
その時も、今のように愛子が呼びに来た。
(ま、まさか・・・、それはないだろう・・・。)
源次郎は、一瞬頭に浮かんだことを自ら打ち消す。
愛子の雰囲気も、そこまでは切迫していなかった。
(で、でも・・・、だったら、何だろう?)
源次郎は、首を傾げながらも、テーブルの上に拡げていたファイルなどを全部鞄に入れる。
(つづく)
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