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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1159)
「だから、“これはヤバイ!”って・・・。」
ママは、それまでの大人しい語り口からは想像もしにくい言葉を口にした。

「ヤ、ヤバイ!?」
源次郎が反射的に問い返す。

「そうでしょう? この子、中学生だったのよ。それだけでもヤバイのに、おまけに女の子でしょう? で、頭がどこか変とくれば、誰だってそう思うじゃない?」
「う、う~ん・・・。」
「私、一瞬は、どこかの回し者かって考えたわ。」
「ま、回し者って・・・。」
「この業界じゃあ、よくあることなのよ。競合する店が、そうしたヤバイ時限爆弾のような子を送り込んでくるってことが・・・。」
「時限爆弾?」
「ええ・・・、そうした子を送り込んでおいて、それをサツにタレこむのよ。
未成年、それも知的障害のある中学の女の子に猥褻な接客をさせてるって・・・。
踏み込まれたら、逃げようがないじゃない?
で、営業停止とか、最悪は逮捕とか・・・。」
「あああ・・・、な、なるほど・・・。」
源次郎は、ヤクザ映画か何かで見たストーリーを思い出している。

「こういう系統の店って、変な言い方だけど、結構それなりのお客さんが通ってくるのよ。」
「それなりのって?」
源次郎は、言われている意味が分からなかった。

「それなりに社会的地位についている人ってこと。
さっき言った内装工事会社の社長さんでも、実は、商工会の理事さんなのよ。
その他にも、お医者さん、学校の先生、警察官に自衛隊、そうそう、政治家もいるの。」
「へ、へぇ~・・・、そ、そうなんですかぁ・・・。」
源次郎は意外だった。
東京で行った店は、とてもそうしたお客がいるとは思えなかったからだ。
店も変態チックならば、お客も変態趣味。
そうした印象しかなかった。二度と来たいとは思わなかった。

「だから、そうして一度でも警察の手が入ったら、仮にお店が生き残ったとしても、そうしたお客さんはお店に来なくなるのよ。やはり、顔がさすでしょう?」
「ああ・・・、それは、そうでしょうねぇ・・・。」
「だから、この子がその回し者なのかどうかは別にしても、とても雇うことは出来ないって思ったのよ。」
「で、お断りになった・・・。」
源次郎は、当然にそうなったのだろうと思って確認をする。

「も、もちろんよ。“頑張ります”って言われても、うちのお店は男の子しか雇わないからって・・・。そう言って断ったの。」
「そ、そしたら?」
源次郎は、どうしてか不気味な感覚が背筋を走るのを覚えた。
ママの言い方に、「そう言ったんだけど・・・」という言い訳のような語尾を感じたからだ。

「“それは、夜のことでしょう?” この子ったら、平然とそう言うのよ。」
「ん?」
源次郎は、慌てて美由紀の顔を見た。


(つづく)





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