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第2話 夢は屯(たむろ)する (その115)
翌朝、源次郎は、ベッドの中で目を覚ました。

どこかで、電話が鳴っている。
その音で、目が覚めたのだ。

「あっ!・・・そうか、・・・モーニングコールだ。」
そう呟いて、ベッドから出ようとするが、身体がやけに重たい。
よく見ると、美由紀が抱きついたままの格好で眠っていた。

美由紀の腕を何とか解放して、リビングまで急いでいく。
ソファに腰掛けて、電話を取る。
「おはようございます。モーニングコールでございます。」
フロント係りの声である。
いかにも、「お疲れですよね」と言いたげだと源次郎は感じる。
もちろん、フロント係りにはそんな気は無いのだろう。
だが、昨夜の状況を見られていることを意識するからか、言葉の端にそうしたものがあるように思えた。

「はい、ありがとう。」
それだけを言って、電話を切る。
朝のまぶしい光が部屋中に差し込んでいる。
そうなのだ、窓にカーテンをすることすら、忘れていたのだ。
その光の中で、源次郎は自分が全裸のままでやってきたことを思い出した。

そのリビングのあちこちに、源次郎と、美由紀の洋服がばら蒔かれた様に散らかっている。
そうだった・・・・。
あの長い抱擁のあと、流れのままに、ふたりしてまるで子犬がじゃれあうように、服を脱ぎ、そして後のことも何も考えることもなく、ベッドに雪崩れ込んだのだった。
風呂は勿論のこと、シャワーも浴びないで・・・。
それだけ、若い2人の燃え滾るような時間だったのだ。

けだるい身体を引きずるようにして、源次郎は、散らばっている衣類を集めて回る。
そして、それらをソファのうえに投げるようにして置いてから、またベッドルームへと戻る。
ベッドの上では、これまた全裸の美由紀が、薄い毛布を抱えるようにして眠っていた。

「美由紀さん、そろそろ時間ですよ。」
源次郎は、少し照れた気持でそう言葉を掛ける。
昨夜、自分が抱いた美由紀の身体なのだが、未だに「美由紀さん」としか呼びようがない。
よく、男と女は、ベッドをともにしたら、その時から互いの呼び名が変わるものだと言われるが、源次郎はそうなった今朝でも、「美由紀さん」と呼んでいる。

美由紀がうっすらと目を開ける。
その先に、裸の源次郎を見て、恥ずかしそうに布団に顔を埋めてしまう。
そして、そのままの状態で、
「源ちゃん、・・・・嬉しかったよ。・・・・でも、恥ずかしい!」
とくぐもった声で言う。
「えっ?何が?・・・・・」
源次郎は、はっきりと聞き取れなかったから、確認をする。
「・・・・だって、源ちゃんのその格好・・・・・」

あっ!そうなのだ、と源次郎は思う。
東京でもこのような関係に至った相手もいたが、この美由紀のような態度をとられたことは無かった。
互いに全裸のままで、お茶を飲んだり、普通の話ができたものだった。
ましてや、ストリッパーである。
16歳のときに、生きるためとは言え、自分で身体を売りたいと申し出た女の子である。
その美由紀が、まるで純情ドラマの主人公のような言い方をするとは思ってもいなかったのだ。

源次郎は急いで、ベッドの中に入り込む。
布団で下半身を蔽うことで、美由紀の指摘に答えるつもりだった。

「ねぇ、今何時?」と美由紀が布団の下から訊いてくる。
「モーニングコールを8時に頼んであったのですから、ちょっと過ぎた頃ですよ。」
源次郎は、事実を答える。
「朝食、頼んだの?」
「いいえ、まだですよ。注文しておきますか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
源次郎の言葉に答えないで、美由紀の手が源次郎の下半身に纏わり付いてきた。

「朝食は要らないから・・・・」
下半身が美由紀に咥えられた。


(つづく)



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