第2話 夢は屯(たむろ)する (その1139)
いくらストリップだからと言っても、最初から裸で舞台に上がるのではない。
それなりの衣装、つまりは何らかの衣類を身に纏って舞台に登場することになる。
それでもだ。
やはり、そこは男の視線を集めるための工夫がなされている。
衣類とは言っても、その目的は「脱ぐための衣装」であり、「自分の裸をよりエロチックに表現するための衣装」であることは言うまでもない。
つまりは、「男の欲情をそそる」衣装である。
着ている衣装の下に、大きな乳房が透けて見えた。
「お、おはようございます。」
源次郎は喉が痞えそうになりながらも、何とかそれだけは応える。
「今日はお早いんですねぇ・・・。」
まだ私服のストリッパーが言ってくる。
「ええ、ちょ、ちょっと、支配人に用事があって・・・。」
「ああ、そうだったんですか・・・。じゃあ、ミッキーさんは?」
「こ、これから、迎えに行くところです・・・。」
源次郎は、敢えて、美由紀の居場所には言及しなかった。
いや、意識して避けたと言うのが正しい。
あの寿司屋が美由紀の実家であることをどの程度のストリッパーが知っているのか分からなかったからだ。
そうした美由紀のプライベートに関わることは、できるだけ触れないに越したことはない。
そう思ったからである。
「ああ、そうですか・・・。ご苦労様です。」
そのストリッパーはそう受け答えする。
そして、ちょこんと頭を下げるようにした。
やはり、美由紀の動静は気になるものらしい。
それを機に、源次郎は足早に出口へと向かった。
そもそも、「お弁当を渡したらすぐに戻ってきて」と美由紀に言われていたのだ。
それなのに、支配人にコーヒーをご馳走になって、そこで少し雑談をした。
その分、当然にだが、時間を食っている。
(美由紀さん、遅い!って思ってるんだろうな・・・。)
今更悔いても仕方の無いことだが、そう思うことで源次郎の足も重たくなる。
前の通りに出てから、源次郎は一気に駆け出した。
少しでも早く美由紀の元へと戻りたかった。
そして、走りながら「遅くなった言い訳」を考えている。
「お、おはようございます!」
そう言って、源次郎は美貴鮨のドアを開けた。
いつもより大きな声である。
2階にいるであろう美由紀に、「今戻りました」と一刻でも早く伝えたかったからだ。
(つづく)
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