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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1109)
それなのに、源次郎の襟には、そうしたものが付いていない。
付けて外したという跡もない。

将来は国鉄で働きたい、鉄道マンになりたい。
そう思っている鉄道マニアの高校生は、そうした社章とか制服というものに関心が高かったのかもしれない。
だからこそ、それに気が付いたのだろう。

「ひょっとして、テレビ関係ですか? そ、それとも、芸能界?」
軽くジャブを撃ったのに源次郎が具体的な反応を示さなかったからか、鉄道マニアの高校生は遂に源次郎に向かって直接訊いてくる。
それでも、「さすがに、それはないか」という思いがその顔には浮かんでいた。

「んん?」
源次郎が喉を鳴らす。今の例示がもっとも現状に近いと思ったからだ。
もちろん、テレビ業界でも芸能界でもない。
ただ、厳密な意味で「ストリップ業界」というものが世の中に通用するものではないという前提に立てば、つまりは大きな括りとして「○○業界」と表現するのであれば、後段の「芸能界」がもっとも近い気がしたからだ。

「ええっっっ! そ、そうなんですか!」
今度はカッちゃんがそう詰めてくる。疑問符は付けていなかった。
どうやら、先ほど源次郎が言った「偶然にスカウトされて」という言葉と、無理矢理にでもくっつけて考えたようだった。

「当たらずも遠からずってところかな?」
源次郎はそう惚ける。これ以上は説明するつもりは無い。
いや、高校生に説明できるものではない。

「へぇ~・・・、そ、そうなんだぁ・・・。」
カッちゃんは、源次郎が「そうだ」と肯定をしたと受け止めたようだ。
大きな目が点になっている。


「そ、そうだ・・・。」
源次郎は言葉を捜した。
このまま話を続けると、とんでもないことになりそうだ。そう感じたからだ。
それと、ここに来てから既にかなりの時間が経っていることに気が付いたからでもある。

「マイク。そろそろ戻ろうか。お姉ちゃん達が心配するといけないから・・・。」
金髪の男の子にそう声を掛ける。
まさに大人の言葉である。

「ん? も、もう行くの?」
マイクが振り返ってきて言う。明らかに不満そうな顔だ。
高校生に教えてもらった取っ手をしっかりと握っている。

「も、もう良いだろ? 長い間、そうしてるよ。」
源次郎は、そうした言葉が子供に通用しないぐらいのことは分かっていた。
源次郎も、こうした年代を経験してきているからだ。
子供の気持は痛いほどに分かる。


(つづく)





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