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第2話 夢は屯(たむろ)する (その110)
「だからなの。絶対に戻らないと誓った筈の北海道に、こうして来ているのは。断れないのよね、あの人の頼みじゃ。・・・・・・」
美由紀は一気にそこまで話して、遠いところを見ているような目をする。

「・・・・・・う〜ん、・・・そうだったんですか。・・・・そうした関わりがあったんですねぇ。」
源次郎は、昨日からの支配人と美由紀の間のいろいろなやり取りを思い出している。
そういった過去があったのだと分ると、「なるほどな」ということも多々ある。
だが、それにしても、あの支配人、どことなく凄みのある狡猾な男だとは思っていたが、やくざとでもちゃんと自分の意思を通せるだけの度量も持ち合わせているようだ。

「それでさ、その札幌の話なんだけど・・・・・・。」
美由紀が話題の原点に戻してくる。
「あっ!・・・・はい。」
源次郎も戻ってくる。

「今も言ったように、私は、北海道で舞台に上がるつもりは毛頭無かったのね。でも、今回のこの小樽の話は、別な次元なの。・・・・だけど、それを知っていて、そうした私の気持を分ったうえで、支配人が笠野さんとの交渉の場を提供したんだよね。・・・・・・・。」
「そういうことになりますかね。あの事務所には普通なら入れないんでしょう?」
「そう、・・・・・だからさ、私は困ったの。つまり、支配人は、札幌の仕事も請けてやれよって事だと思うのね。」
「なるほど。そうした事情も分っていての段取りですものね。」
「その意味が分らないの。・・・・・どうして、私に札幌の仕事を請けろと言うのか。」
「それは、自分の営業がしやすいように、ってことじゃないんですか?」
源次郎は、どうしてもあの狡猾そうな支配人を好きにはなれない。
ましてや、東京でも出会いの仕方を聞いたのだから、ますます、その気持は強くなる。

「確かに、仕事上では、あの人は老獪よ。何年もこの業界でやってきた人だから。・・・・でもね、女を泣かせてまでする人じゃないの。それは、それだけは分るの。最後の部分だけは、私たちの言い分を守ってくれる。」
「でも、やはり自分が一番可愛いでしょうから。」
源次郎は、自分で話していながら、何だか支配人を敵に回したくて仕様が無い気持になっている。

「だから、本当に迷っているの。」
「それで、僕に下駄を預けるんですか?」
「この小樽も、あの支配人がやってくれと言うから来たの。他の人からの話だったら、絶対に来てないわ。それと同じで、今度は源ちゃんが一緒なら、行ってもいいかな?って思えたの。・・・それとさ、そういう話でもないと、源ちゃん、この2週間が終わったら、さよならするんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから、両方の意味で、賭けたの。」

源次郎は、交渉を自分に任せたいという美由紀の気持が少しずつ分ったような気がする。


(つづく)



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