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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1099)
「アメリカ人?」
高校生は、訊きにくそうに、それでも思い切って訊きましたという顔で言ってくる。
もちろん、金髪の男の子のことだろう。

「さ、さあ~・・・、僕もよく知らないんだ。」
源次郎はそう答えるしかない。事実、そのとおりである。

「ええっ・・・、ああ・・・、そうなんですか・・・。」
高校生は、源次郎の答えをとても意外そうな顔で受け止める。

「・・・・・・。」
源次郎も言葉が続かない。
それはそうだろうとは思う。
こうして男の子を連れて歩いているのだ。
その子のことを、何人なのかも知らないってのは、如何にも嘘を言っているようにしか見えないのだろうと。

「す、すみません・・・、余計なことを訊きまして・・・。」
高校生は、そう言って自分で自分の頭を拳骨でポカリと叩いた。
彼なりの謝り方なのだろう。
訊いてはいけないことを訊いたと感じたようだった。

「い、いや・・・、良いんだ。知らないってのは、本当なんだし・・・。
何しろ、たまたま車内で向いの席に座ることになっただけで・・・。」
源次郎は高校生に気を遣った。
何も謝ってもらわなければ行けないようなことではない。

「ええっ! ああ・・・、そ、そうなんですか?」
高校生は、先ほどとはまた別の意味で驚いたようだった。
目をパチクリさせている。

「あははは・・、じゃあ、どうしてこうして手を繋いで来てるのかって?」
源次郎は、高校生が驚いた理由をそう感じた。
如何に現代よりははるかにのんびりとした時代だったにせよ、初対面の男に5歳の子供を預ける親はいない。やはり、警戒するのが当然だろう。
有名な誘拐事件がテレビで報道されてもいた。

「ええ・・、まあ・・・。」
高校生は苦笑いをするようにしながら、源次郎の指摘に答えてくる。

「ま、男同士で気が合ったってことかな?」
源次郎は、男の子をトイレに連れて行ったことには触れないでおこうと思った。
どうしてだか分からないが、それが男の子の名誉を守るように思えた。

「ほら、君の友達ともあんなに仲良くなってるだろ?」
源次郎は、目の端で男の子の様子を捉えていた。

相変わらず、男の子は高校生に教えて貰ったとおりに、片手を取っ手に添え、両脚をやや広い目に開けてドアにへばり付いている。
そして、その横には、汚れるのも気にならないのか、ズボンの両膝を床に付くようにした鉄道マニアの高校生がぴったりと寄り添っている。

「そ、そうですねぇ・・・。」
源次郎と話していた高校生が苦笑いをしながら何度か頷く。


(つづく)




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