第2話 夢は屯(たむろ)する (その1089)
「青い目をしたお人形は、アメリカ生まれのセルロイド・・・。」
源次郎の頭に、ふとそんな歌が思い浮かんだ。
題名は定かではなかったが、確か、野口雨情の作詩だったと記憶している。
それだけ綺麗な目の色だった。おまけに金髪である。
誰が見たって、到底日本人の子供には見えやしない。
それなのにだ。この男の子はちゃんとした日本語を話す。
源次郎が言っていることもそれなりに理解している。
さらには、日本人女性が連れている。きっと、母親なのだろう。
てことは・・・。
源次郎は、ここまでで頭を軽く振った。
そんなこと、関係無いだろう。
それこそ、美由紀の言葉ではないが、人にはそれぞれいろんな事情がある。
それを、他人がとやかく言ったり詮索したりするのはやるべきではない。
そう自分を諌めたのだ。源次郎だってされたくはない。
「よ~し! 拭けたぞ。じゃあ、行くか!」
源次郎は出来るだけ平静を意識する。
「う、うん・・・。」
男の子は、そう言って恥ずかしそうに笑った。
その笑顔が何とも眩しく感じられた源次郎である。
ふたりは連れ添うようにしてトイレを出た。
「おっと! こ、こっちだよ。」
男の子が進行方向に向かおうとしたのを源次郎が引き止める。方向が逆だからだ。
「ん? ああ・・・、えへっ!」
男の子は小さな舌を出した。その仕草がこれまた可愛い。
「手を繋ごう。」
源次郎がそう提案をする。
走行中の列車内である。別にそうしなくっともまさか迷子になることは無いだろう。
そう思いはしたものの、源次郎はどうしても男の子と手を繋ぎたかった。
「ボク、名前は?」
列車内の通路を手を繋いで歩きながら源次郎が振り返るようにして訊く。
狭い通路だから、並んで歩くというのが難しかった。
「マ、マイク・・・。」
聞き取れるかどうかといった小さな声で男の子が答えてくる。
「マイク?」
源次郎はそう口の中で繰り返しながら、とあることに、なるほどと納得をする。
ひとつには、やはり純粋な日本人ではないという事実である。
日本人であれば、自分の子供に「マイク」というカタカナの名前を付けることはしない。
つまりは、両親、もしくは両親のどちらかが外国人なのだろうと思う。
そして、一緒だったあの女性が、男の子のことを「マイ君」と呼んでいたことだ。
恐らく、「マイク」と「マイ君」を聞き間違えたのだろうと。
(つづく)
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