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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1079)
「ほ、本当に知らなかったんですから・・・。」
源次郎は、それだけは分かって欲しいと思うから再度言う。
そして、美由紀の返事を待たずに次の言葉を口にした。

「美由紀さんを見送ったら、急に僕も行きたくなって・・・。
そ、それで・・・。
最初から、そうしようと思っていたんじゃなくって・・・。」
「・・・・・・。」
美由紀はただ黙って聞いている。
いや、聞いてくれているのかどうかも分からない。
源次郎が後から言っているからだ。

「そ、それにしても・・・、美由紀さん、早かったですねぇ・・・。」
源次郎は、言ってから「余計なことを!」と自分を責めた。
だが、もちろん「時既に遅し」である。
今更、口に手をやってもどうにもならない。

「ん? ど、どうして?」
美由紀が反応する。と、同時に源次郎を振り返ってくる。

「うっ! どうして?」
源次郎はオウムのように美由紀の言葉を繰り返すだけになる。
まさか、「おしっこするのが早かったってことで・・・」とは言えない。
ここは駅のホームである。しかも、近くには結構大勢の乗客が同じように列車を待っている。
死んでも、恥ずかしくって言えるものではない。

「お化粧の状態を確認しただけだし・・・。」
美由紀は、源次郎が犯した勘違いが理解できたようだ。
そう言うことで、それを遠まわしに指摘してくる。

「あああ・・・、そ、そうでしたか・・・。」
源次郎は赤面した。
そう、まさに、大きな勘違いである。

「トイレに行く」。もっと下品に言えば「便所に行く」だ。
男の源次郎にとっては、それは「用を足す」とイコールである。直結する。
だから、美由紀に「おトイレに・・・」と言われたとき、100%おしっこだと思い込んだのだ。
だが、美由紀は「化粧の状態を確認しただけ」と言う。
つまりは、鏡を見てきただけだと言っているのだ。
だったら、早くって当然でもある。
実態的には、ほんの十数秒だったに違いない。

「それなのに、出てきたら、源ちゃんの姿がどこにも無い。
私、かくれんぼをしてるのかと思ったわよ。」
美由紀は、そう言ってその場面を思い出すように笑った。

「ええっ! か、かくれんぼ?!」
源次郎は、ポカンと口を開けたままになる。
まさか、そんな言葉が飛び出してくるとはまったく予想していなかったからだ。

「そう、だから、意地悪な・・・って思ったの・・・。」
美由紀は、そう言って、ほんのちょっとだけ首を傾げるようにした。


(つづく)





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