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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1049)
「おお~! どうしたんだ? 何かあったのか? って・・・。」
美由紀は、その相手の口調を真似するように言う。
そして、やや恥らうような、それでいてどうしてか嬉しそうにする。

「・・・・・・。」
源次郎は複雑な気持だ。
もちろん、その相手がどこのどんな人間なのかは想像も出来ないが、少なくとも当時の美由紀にとってはそれなりの重みのある人間だったのだろう。

「正直に話そうと思って電話したのに・・・。
私、声を聞いたら、痴漢に遭ったって言えなくなっちゃって・・・。」
「そ、それで?」
源次郎は相手の反応が気がかりだった。

「ただただ、“御免なさい”を繰り返してた・・・。」
「・・・・・・。」
「そうしたら・・・。」
「そ、そうしたら?」
「今からでも来るかい?って・・・。」
「・・・・・・。」
源次郎は、美由紀がその言葉を待っていたように感じた。

「だから・・・、“はい”とだけ・・・。」
「で?」
「また電車に乗って・・・。」
「・・・・・・。」
源次郎は、「行ったんですね?」という言葉を飲み込んだ。


「その相手の人のこと・・・、源ちゃん、気になる?」
美由紀は、コーヒーを飲み干すようにしてから、そう言ってくる。

「ええっっっ! べ、別に・・・。」
源次郎はそう答えたものの、それが本心では無いとすぐに美由紀に感づかれるだろうと思った。
だから、慌てて食事の続きをする。
そう、取ってつけたようにだ。

「そ、そうなの?
だ、だったら、もう言わないわ。」
美由紀は源次郎の答えを予想していたかのように言う。

「・・・・・・。」
源次郎は、茶碗に残っていた最後のご飯で口を一杯にする。
何かを言いたくなっても言えないようにだ。
自分で自分の口を塞ぐ格好になる。


「そろそろ、源ちゃんのコーヒー持って来ようか?
飲むでしょう? 食後のコーヒー・・・。」
美由紀は半分腰を浮かせるようにして言ってくる。


(つづく)





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