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第2話 夢は屯(たむろ)する (その1039)
「ほ、他に何か要る?
納豆もあったけれど・・・、源ちゃん、食べる?」
自分の主張が聞き入れられたと思うからか、美由紀は嬉しそうにしながらそうも付け加えてくる。

「い、いえ・・・、もうこれ以上は・・・。」
源次郎は正直に言う。
朝食としては結構な品数が目の前にある。

「ああ、そうだ! 生卵もあるわよ。取ってこようか?」
「い、いえ・・・、もう・・・。」
「遠慮しないで・・・。」
「い、いえ、本当に・・・。」

「う、うん・・・、分かった・・・。」
美由紀は少し残念そうな顔をした。
何かをしたいのに、それひとつひとつ取り上げられたような顔だ。
で、自分のコーヒーカップを置いて、また例のコーナーの方へと向かっていく。

「・・・・・・。」
その美由紀の後姿を見て、源次郎は、「何かを頼めば良かったかな?」と思った。
そうすれば、美由紀は喜んでくれたのかもしれない。
少しぐらいは、そう、生卵ぐらいは「それ貰います」と言えば良かった。
あれだったら、醤油を数滴落としさえすれば、そのままでも飲むことが出来たのに・・・。
今更言っても仕方が無いことを考える。


と、そこで初めて気が付いた。
そう、美由紀の後ろ姿を見つめるようにしていてだ。
そうして動く美由紀の姿を目で追っていたのは、決して自分だけじゃあなかったってことにだ。

このホテルの朝食サービスが何時から行われているのかは知らなかったが、既に食事を終わって、食後のコーヒータイムを楽しむ人間があちこちに居た。
新聞を広げている人もいる。

(け、結構、泊まってるんだ・・・。)
源次郎は、まずはその数に改めて驚く。
今、見えているだけで、総勢40人ぐらいはいるだろう。
しかも、女性の姿は見えない。
男性ばかりである。

独立系のホテルだと聞いた。
しかも、建物自体、そんなには大きくない。
どちらかと言えば、比較的小規模なビジネスホテルだ。
昨日初めて来て、そうした印象を持っていた。

だが、それは源次郎の見誤りだったようだ。
そうしたイメージを覆すだけの光景だった。


(つづく)




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