第2話 夢は屯(たむろ)する (その1029)
「・・・・・・。」
源次郎は、何も言えなかった。
美由紀の手の取り方がこれまたいつもとは明らかに違っていたからだ。
美由紀は、自分から仕掛けてくるとき、必ずと言って良いほど、源次郎の腕を取ってきていた。
つまりは、腕を組んで歩こうとした。
それなのに、今朝は、どうしてなのか、まさに手を取ってきた。
まるで、子供同士が手を繋ぐようにだ。
「じゃあ・・・、行きましょう!」
戸惑う源次郎に、美由紀がそう言ってくる。
そして、繋いだその手を引っ張るようにして部屋の表に向かおうとする。
「に、2階って?」
源次郎が問う。
美由紀がそこに向かおうとしているのは分かっていたからだ。
だが、そこに何があって、どうしてそこに向かおうとしているのかがさっぱり分っていない。
「ご、ご飯・・・。」
美由紀が小さな声で答えてくる。
まるで、それを口にするのが恥ずかしいことであるかのように。
「ご、ご飯って・・・、朝食です?」
源次郎の問いはボケている。
自分でもそれに気が付いたぐらいだ。
こんな時間に「ご飯」と言えば朝食に決まっている。
それなのに、源次郎は何ともそれが意外なことのように思えたのだ。
「う、うん・・・。2階のレストランで食べるんですって・・・。」
美由紀がそう種明かしをしてくる。
「ああ・・・、そ、そうなんですか・・・。」
源次郎が初めて聞く話しだった。
朝食の事まで頭が回っていなかったというのが正直なところだろう。
美由紀に先導されるようにして部屋を出る。
そして、源次郎が鍵を掛ける。
「うふっ!」
どうしてか、美由紀がそう言って嬉しそうに笑った。
「ん?」
「・・・・・・。」
源次郎がその理由を問うたが、美由紀はただ首を横に小さく振っただけだった。
答えるつもりはないらしい。
「鍵は源ちゃんが預かってて・・・。」
代わりに、それだけを言ってくる。
(つづく)
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