第2話 夢は屯(たむろ)する (その101)
源次郎は、こうしたストリップの世界はまったく知らない。
もちろん、過去に見たことはある。
だが、それは、単に代金を支払って、劇場でそのショーなるものを見ただけのことである。
そのショーが、どのような手順で作られ、どのような女性が出演しているのかにも、まったく関心は無かった。
ショーを見に行く唯一の目的は、やはり「女性の裸」を見たいからであって、その世界を知りたいと思って行く男は殆どいないだろう。
どこででも簡単に見られるのであれば、わざわざそのようなお金を叩いてまで見に行く奴もいまい。
やはり、そうではないから、日常的に得られる場面ではないから、せめてそうした劇場であっても・・・と
男は通うのである。
別に調べた訳でもないのに、こうしたストリップショーをやる女性は、必ずヒモみたいな男がいて、本当は他の男に自分の裸体を晒したくはないのに、男に言われて泣く泣くそのような舞台を務めている。
そんなふうに、漠然と思っていた。
トルコ風呂(今で言うソープランド)で働く女性や、夜の街角で道行く男に声を掛ける女達も、皆、同じような境遇なのだと思っていた。
「女は男次第」
父が、飲むとよくこの言葉を吐いていた。
その意味を詳しく聞いたことは無かったが、東京へ出てから、ひとりで生活をするようになってから、何となくその言葉の意味がぼんやりとわかるような気がし始めていた。
確かに、悪い男に引っかかると、女は辛いことになる。
あちこちで、いろいろな人間と話すようになって、良いも悪いも含めて、少しは社会の裏と表が見え始めていたのかもしれない。
だからなのだろう。美由紀と源次郎の間を「男と女」だと決め付けられることに、異様な不安感がある。
美由紀が言うとおり「どう思われても良いじゃない」とは割り切れないのだ。
そこに、この話である。
笠野という男。支配人にどのように言われたのかは分らないが、やはり、源次郎を美由紀のヒモのように思っているのではないのか?
だったらどうなのだ?という気持もあるのだが、それを逆手にとってより有利な交渉をすれば・・・というようなところまでは悪びれないのだ。
だからである。
受け取った資料を、まったく見もしないで鞄に仕舞い込んだ。
主導権を握るのであれば、当然に、幾らもらえるのか?といった条件は真っ先に気になることである。
恐らくは、笠野も源次郎がそうするだろうと読んでいた筈である。
だから、場合によっては、その内容を詳しく説明するという雰囲気があった。
ところが、源次郎はそうはしなかった。
そう思われなくない!という意識が、いや、本当にこれで良いのだろうか、という迷いが、源次郎をより消極的にさせたのである。
(つづく)
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