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こんな夢を見た−マラソン

作者:青葉台旭
 私はその日、市民マラソン大会に出走した。
 それほど優秀ではない市民ランナーの私は、スタート直後から下位を走り、走っている間もどんどん他のランナーに追い抜かれて行った。
 これっぽっちも順位を上げようという意志のなかった私は、いくら他のランナーに追い越されても何とも思わず、ただ淡々と走っていた。
 しばらくして、後ろから肩を叩かれた。
 走りながら振り向くと、いかにもアスリートらしい体脂肪率の低そうな頬の()()()女が、私を見ていた。
「そんな甘っちょろい走り方でどうする! さあ、私と一緒に特訓だ!」
 女が走りながら私に言った。
 レース本番中に特訓も何も無いだろうにと思いつつ、何故(なぜ)か私は、女を自分の専属コーチだと思い込んで、彼女の言うとおりにした。
 女コーチは、いきなり市民マラソンのコースから外れて、脇の細い路地を走りだした。
 コースを外れれば失格になるだろうと思いながらも、私は女コーチの後ろについて走った。
 やがて、一軒の古い小さな酒屋が見えてきた。
 私は、その酒屋に見覚えがあった。
 むかし、若いころにデートを申し込んで見事に振られた女の実家だった。
 彼女は今頃どうしているだろうなどと思いながら走っていると、女コーチはその酒屋に入っていった。
 酒屋には出入り口が二つあり、どちらも開け放してあった。
 ちょっとだけ躊躇したが、私も女コーチに従って酒屋の中に入った。
 中に入ると、コーチは反対側の出入り口から店を出るところだった。
 急いでコーチの後を追い、私も反対側の出入り口から酒屋の外に出た。
 コーチは、酒屋の周りをぐるりと半周して、また最初の入り口から酒屋の中に入った。
 私も、もう一度酒屋の中に入った。
 こうして、私と女コーチはマラソンの特訓と称して、酒屋に入っては出て、入っては出て、を繰り返した。
「何をしている! ペースが遅いぞ!」
 コーチが私を叱咤(しった)した。
 私とコーチは、さらにペースを上げて、酒屋を出たり入ったりした。
 ふと酒屋の店内を見回すと、私が若いころに振られた酒屋の娘が、その当時のままの若さと可愛らしさで、店の冷蔵庫にビールを補充していた。
 小柄で、華奢で、胸は小さいが、お尻はそこそこボリュームがあって丸っこく、その丸っこいお尻がジーンズを内側から押し上げてデニム地がパンパンに張って真ん中の縫い目あたりが尻に食い込んでいる所も昔のままだった。
 ふと、酒屋の娘が振り返って、ランニング・シャツとランニング・パンツ姿で店内を走る私の姿を見た。
 私は反射的に腰をひねって、ランニング・パンツの股間部分を彼女に見られないようにしながら、急いで店の外へ出た。

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