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主食はビーフウエリントン

ポルノか文学か 村上春樹 vs 渡辺淳一

 最近、ツイッターだったと思うが、「村上春樹がラノベだと言う人は、春樹もラノベも読んでない」という書き込みを見て、言いえて妙だと思った。
 同様にネットでよく目にする「渡辺淳一の小説はポルノだ」と書き込む人は、もしかしたらポルノ小説をあまり読んだことのない人かもしれない、と思うことがある。
 小生も詳しいことは知らないが、国語の教科書には出てこないものの、近代日本文学には谷崎潤一郎を含む耽美派文学の系譜が連綿としてあり、現代のポルノ小説もこれとリンクし、団鬼六の「花と蛇」のようなその分野の古典も輩出した。つまりポルノ文学もそれなりに奥が深いのだ。

 激しい性描写で物議を醸し出す村上春樹と渡辺淳一。彼らの作品はポルノか文学か。以降、日頃小生が考えていることを述べる。

1.春樹はハーレム・カウンセリング型ポルノ恋愛小説

 通常、恋愛ドラマは「ロミオとジュリエット」のように、男女1名ずつ登場する。これを少し発展したものが「狭き門」や「友情」のような三角関係恋愛ドラマ、つまり男1名対女2名、または男2名対女1名だ。
 今日のテレビドラマではさらに複雑化し、男女が複数登場し、複雑な恋愛関係を形成する。だがいずれの場合も一夫一婦制を前提とした恋愛ドラマだ。
 これに対し、村上春樹の「ノルウェイの森」はハーレム(一夫多妻)型恋愛ドラマと言うべき、新機軸を打ち出した。最新作「騎士団長殺し」もやはりハーレム型である。
 つまり主人公の男が複数の女性と恋愛関係になる。「ノルウェイの森」では全員独身女性(?)、「騎士団長殺し」では既婚女性も含まれていたかと思うが、いずれも女性たちは悩みを持ったメンヘラで、主人公がカウンセラー役となり、悩みを聞いてあげたり、エッチをしてあげたりして彼女たちを癒すのである。

 それにしろ、若い娘から熟女おばさんまで”食って”しまう春樹のスケベ度には敬服する。


2.渡辺淳一は「トリスタンとイゾルデ」型ポルノ恋愛小説

 渡辺淳一は「うたかた」の文庫本後書きで、本作品はワグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」から影響を受けたと書いている。その約10年後に執筆した代表作「失楽園」も、「トリスタンとイゾルデ」の小説版と言ってよい。
 オペラ「トリスタンとイゾルデ」は中高年不倫ドラマだが、ただおじさんとおばさんが不倫しただけでは「トリスタンとイゾルデ」にならない。これは「うたかた」の後書きに書いてあったことだが、中高年の不倫プラス、主役のおじさんとおばさんの描写に極端にフォーカスした作品であることが必要だ。
 「うたかた」でも「失楽園」でも主役の男女以外にもキャラは登場するが、ほとんど端役かエキストラに近い。そしてサイドストーリーはなく、全編、主役の男女二人だけの世界が描写される。しかも男しか心理描写はしない。女の心理描写はしない。ただ男が女の気持ちをああでもないこうでもないと推測する描写が続く。
 「夫にはどんな言い訳をして、彼女はこのラブホテルへ来たのだろうか」といった感じだ。
 登場人物が実質二人で、心理描写はそのうちの一人だけ。これは本来、短編一人称小説のシチュエーションだ。ところが「うたかた」も「失楽園」も長編三人称小説である。
 他の作家であれば、長編三人称小説の場合、主役の男女以外に、恋愛にからまない多くのキャラが出てきて、サイドストーリーがメインストーリーに複雑に交錯するのが普通だろう。
 テレビドラマ化された「失楽園」では、原作小説と異なり、たくさんのキャラが出てきてサイドストーリーもあった。
 だが原作小説では、主役の二人だけの世界を極力描き、余計なストーリーは極力省くことで、不倫恋愛ドラマを最大限に強調している。これは恋愛小説としても、中間小説としても全く新しい手法だと思う。


3.渡辺淳一とポルノ文学の関係

 ところで渡辺淳一の小説はポルノなのか。イエスかノーの二択では回答できない。
 小生の回答はこうだ。
 渡辺淳一はおそらく別のペンネームでポルノ小説を書いており、渡辺淳一ブランドで発表するポルノ風中間小説と独自の基準で区別していたと思う。
 物理的証拠はないが、これだけ過激な性描写の筆力を持っているのである。渡辺淳一なら、こてこてのポルノ小説を書けるはずだ。
 実は今どきの商業誌のポルノ小説は読者がある程度以上、”抜ける”小説になっている。ただ性描写が出てるくだけではだめで、読者が”抜けなければ”、そんなポルノ小説は市場から消える。アダルトビデオと同じ原理だ。
 渡辺淳一および担当編集者は、読者を最大限イカせることを目的とした小説を別名のポルノ小説、不倫する男性の心理描写に注力した小説を渡辺淳一ブランドのポルノ風中間小説と区別していたのではないか。
 それが妥当な区別かどうかはともかく、両者は微妙にテイストが違う。同じフルーツジュースでもオレンジジュースとグレープフルーツジュースの味が異なるように、微妙な味の違いを楽しんでこそ小説グルメ通ではないか、と思う。
 ところで上記の仮説が正しいとしたら、渡辺淳一はどんなペンネームでポルノ小説を書いていたのだろうか。
 綺羅光、杉村春也あたりがあやしいと思っているのだが......(反論ある方、感想お願いします)。

                                           (了)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。よろしければ以下の作品もお読みください。

①タイトル 「空飛ぶカレー本舗」
②ジャンル ミステリー(ピカレスクロマン物)
③URL  http://ncode.syosetu.com/n3310dl/

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