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11月18日、一部改訂しました。
全体的な設定との繋がりの不備は解消できたでしょうか?
・いわゆるプロローグ  第一章 ロザリア社長
・いわゆるプロローグ

羽田発A空港行きエアバスは、まさに急降下しつつあった。
私、結構いい年の主婦、伊丹京子は、垂れ下がってくる酸素吸入器を装着して、
救命胴着のありかを確認しながらも、「これは、ダメかも」と覚悟しつつあった。

東京の会社に就職したばかりの長男が、大学時代から付き合いの有る彼女と「デキ婚」したため、
すでに、生まれたての孫息子がいるオバアチャンなのだし、長女は大手企業に勤めている。
末の次男は無事志望大学に入った、もう、親としての努めも九割がた済ませている気がする。
死んでしまうなら、それはそれで仕方がないか・・・などとぼんやり思っていると、
脳内で、やけに明るい調子の男の声が響いた。

「伊丹京子さん、もしもしー、京子さん」
「へ?何、というかあなた誰?噂に聞く死神さんか何か?」
「あたらずといえども遠からずってとこですかね。あなた自身の伊丹京子としての一生がここで終了となるのは、既に確定された事でして、私としても如何ともしがたいのですが、この世界とは異なる世界でしたら、
すぐにあなたのご希望に沿った別の人生をご用意できます」
「異世界転生ですか?ファンタジーの定番じゃないですか」
「いや、確かに。この非常事態に随分冷静ですね」
「そりゃもう年ですから、なまじのことでは驚きませんよ」
「結構結構、精神年齢の高いというか、成熟度の高い魂が必要なんですよ。
一つの世界を救うために、あなたの魂はおあつらえ向きなんです。」
「何やるんですか?美少女に生まれ変わって美形男子にモテモテとかじゃないとやる気になれません」
「それはお安い御用です。あ、五分で地面に激突しますが、あと二つ条件を付加できます。
魔法とか特殊能力とか付け加える事が出来ますよ」
「じゃ、魔法使い放題」
「魔法の体系は膨大でして、ある程度の絞込みはしていただかないと・・・そうですね、
何かあなたがイメージできる雛形というか、アイデアの素みたいなものがあると、
それに則した体系の魔法を使い放題にすることは可能です」
「では、あの黒いバッグの中に入っているゲームの攻略本の中に出ている魔法と技は使える、
あと、有る程度独自アレンジや合成が出来るっていうのはどうです?」
「かなり古いFFシリーズとヴァリュキリー・プ◎ファイル、乙女ゲー、変わった組み合わせですね」
「長女と次男に頼まれてアキバで買ったゲーム攻略本の古本です」
「でも大丈夫です。これで行きましょう」
「後は・・・伊丹京子としての能力・記憶を保持していたいのですが、可能ですか?」
「可能ですが・・・最後の条件も合致させるには、文字通り生まれ変わって赤ん坊からやり直して下さい」
どうやら、最後の条件が一番難しいものだったらしい。
「では、時間も差し迫ってますから、行きますよ!」

その死神?らしい男の声が大きく響いたと思った後、随分長い間意識を失っていたらしい。
再び明るい光の中で目覚めたとき、予想していたとはいえ、やはり度肝を抜かれた。




第一章 ロザリア社長

「クラウス!クラウス!これは一体どうしたことなの?」
いつも各店舗との業務連絡をつけたり、仕入先との商談の段取りをまとめる役のクラウスが居ない。
眉をひそめて、社長室のデスクにどっかり腰をすえたその姿は、紛れも無い美少女でありながら、
風格といい堂々たる態度といいこの部屋の雰囲気になじんでいた。
アムダリア帝国有数の大貴族令嬢でありながら、帝国、いや外国までその名を知られる大手食品会社、
「キョウコ」の創業者にして社長ロザリア・ド・ヴァレス・レオンハート12歳、
これが伊丹京子がこの世界、オルトに転生後の姿である。

クラウスに命じていた隣国キタイ王国への出店計画は順調に運び、
来月にはロザリア自らがキタイ王国の首都ブルサに出向き、摂政のエスコバル公爵立会いの下、
必要書類に調印すれば良いだけになっていたはずだ。
軍事大国としての色彩が濃いこのアムダリア帝国とは異なり、通商で富を蓄え外交で戦乱を避けてきたキタイ王国は小国だが、自由闊達で明るい国内の雰囲気はやり手の摂政エスコバルの功績の賜物だという評判だ。
エスコバル公爵は30歳だが独身で、エスプリに満ちた話術と気さくな人柄で多くの女性ファンがいる。
蜂蜜の様な艶やかな金色の髪とやさしげな緑色の瞳の稀に見る美丈夫であることも、人気の一因であることは確かで、エスコバル公爵の肖像画は今や代表的なブルサ土産となっている。
エスコバル公爵にあこがれる妙齢の女性が肖像画を買うのはモチロンだが、商いの守り神として、
あるいはオルトで最も豊かだというキタイ王室にあやかる為に
各国の商売人が買うということも普通になっている。
ロザリアは、この名高い公爵と一年文通を続けていたが、直接会話を交わす機会を得ることを大変楽しみにしていた。
「ひ、姫様、一大事です!」
クラウスが、血相を変えて飛び込んできた。
ビジネスに関わる場所では「姫様」ではなく「社長」と呼ぶように度々注意しているのだが、
帝国建国以来、レオンハート家の家臣として仕えて来た家柄のクラウスは、どうかするとすぐ、
注意を忘れてしまうようだ。

「皇太子殿下じきじきのお達しで、今回のキタイ王国への出店計画は白紙撤回せよとの事です」
従来なら、商業・貿易に関する事柄は皇帝の老臣たち10名で構成されている最高諮問会で許可されれば、
何の問題もないのが普通なのである。
当然ながら、賄賂とか鼻薬、付け届けの類はかなり使ったが・・・いつものことで、今回の出店計画も事前の根回し、調整は抜かりなかったはずなのだが・・・
最高諮問会の決定を白紙に戻す権限は、皇帝自身と皇帝の軍を指揮するものにのみ与えられている。
病床について長い皇帝に代わり、現在、軍の最高司令官は摂政でも有る皇太子となっていた。
5歳年長の従兄弟に当たるアムダリア帝国皇太子ユーグは白銀に輝く髪と真紅の瞳を持った類まれな美青年だが、誰に対しても心を開かず、謎めいた「氷の微笑」と、剣の腕前・輝かしい軍歴により恐れられていた。
ユーグの生母はレオンハート家の出身で、ロザリアの父の妹であった。
穏やかなやさしい人柄で、「小さなロザリー」とロザリアを呼び、何かというと目をかけてくれたのだが、
5年前のある日、宮中内に発生した毒殺事件でユーグの弟・妹ともに命を落とした。
后妃と皇子・皇女が一度に死亡という前代未聞の大事件であるにもかかわらず、犯人はいまだ不明である。
この事件以来、父のレオンハート公爵はロザリアを宮中から引き離し、領国の邸で生活させるようになった。
皇太子ユーグが「氷の微笑」の持ち主となったのは、この時期からであった。

「・・・とまあ、このような次第でして、皇太子殿下のご命令はいかなるお考えによるものか、私ごときでは、皆目見当がつきません」
「宜しい、クラウス。では、私自身が殿下に直接伺って来ましょう。お優しかったユーグ兄様が昔とはすっかりお変わりになってしまったのだとしても、私とあの方とはいわば幼馴染で従兄弟同士・・・。率直なお気持ちやお考えをお打ち明け下さらないとも限らないもの。まあ、難しいのかもしれないけれど、何らかの事情があるはず。その一部だけでも探り当てておきたいものだわ」

ロザリアは皇太子の公邸でもある摂政府に出向く為に、身支度を整える事にした。
「クラウスは、キタイの方々と連絡を取り、率直にご事情をお伝えして。
御詫びはくれぐれも丁重に頼むわよ。キタイ出店用に用意した品物と資金は、国内、特にこの帝国の中心部の店舗網の強化に振り向けて頂戴ね。では、摂政府にけんかを売ってくるわ」
「ひ、姫様!皇太子様は冷酷で御気性が激しいと伺っております、どうか穏便にお願いいたします」
「そうねえ・・・そうやすやすと殿下の刀の錆びになる気も無いけど」
「姫様!」
「社長でしょ?何、様子を見てくるだけ。無理はしないから、お前は自分の仕事を頼むわ」

ロザリアは社長室を出て自分の寝室に引き取り、小間使いのナネットを呼ぶ。
衣装と身支度の件はナネットに任せれば安心だと、ロザリアは深く信頼している。
「出来る女という雰囲気で行くべきかしら、可愛い子路線で行くべきかしら」
それを聞いてナネットが笑い出した。
「姫様は12歳でいらっしゃいますよ。大天才でいらして、そこらの大人が束でかかっても叶わない程の才覚と度胸をお持ちですが、御親戚でも有る皇太子殿下と久しぶりにお会いになるのですから、小さなロザリーちゃまでいらした頃の事を懐かしんで頂けた方がお話も弾みませんか?」
「小さなロザリー」と読んで可愛がってくれた叔母のアデル妃殿下は、今の孤独な皇太子を見たならばどう感じるんだろう?ふとロザリアはそんな事を思った。
「アデル妃殿下は『ロザリーは何でも似合うけれど、ユーグの瞳と同じ色の真紅が特によく似合うわ』とおっしゃってました」
「あら、そんな事おっしゃっていたかしら?」
「そうですとも。妃殿下は姫様を皇太子妃になさりたいお考えがあったのかもしれませんね」
「まさか・・・お前の考えすぎよ、ナネット」
「はいはい、そういう事にしておきます。でも、ご自分がおなかを痛めた殿下のお妃は、好ましいと感じられる姫君であって欲しいとアデル様がお考えになったとしても、自然じゃありませんか?」

ナネットの言い分を認めたロザリアは、素直に真紅のドレスを着て、似つかわしい真珠とルビーを沢山あしらったネックレスとイヤリングの一揃いを身につけた。その行為に何の不自然さも作為も無い。

帝都中でクラウス一人が正確な記憶を保ち、皇太子の魔法の影響を免れていると言う重大な秘密の存在も、クラウスやエスコバル公爵との真の関係も、完全にロザリアの記憶から抜け落ちていた。「敵を欺くにはまず味方から」とは言うものの、クラウスが酷く胸を痛めているなど露ほども感じていなかった。
第十五章読了後、一応続きになる15禁の短編があります。
穏やかですがシモネタです。
http://ncode.syosetu.com/n6714i/
【恋愛遊牧民R+】



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