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006ー勇者は せいけん を てにいれた!
「わしが、軍部のトップ、大将軍 レッツ・サルドン・フラフ・ツーイカ・ロドリゲルだ。
 わしのことは大将軍閣下か、ロドリゲル伯爵と呼ぶが良いぞ」
 禿で、焦茶色のナマズ髭の恰幅のよい男が、ガハハハハハと笑い声を上げた。

 光一は眼を瞬かせ、竜斗は訝しげに眼を眇める。
 お披露目が終わったあと、竜斗たちは従者たちと共に別室に案内されていた。

「さて、新米勇者に来てもらったのは、他でもない。
 今後の方針を伝えるためだ。
 まず、君たちには、軍の訓練を受けて貰う。
 君たちには、じっくりと実力を付けて貰って――」

「断る」
 竜斗が拒絶する。

「な、何だと?」
「俺は、独自のやり方でやらせてもらう」

「ふざけるな!!」
「独自のやり方とは、どのような?」
 レッツの怒声と、今まで黙って座っていた茶金色の癖毛に青い眼の騎士の声が、重なった。

 竜斗は、青い眼の癖毛の騎士に視線を向ける。
「正攻法じゃ、埒が開かなかったから、今、俺たちがここにいるんだろ」

 クッと唇の片端を吊り上げた騎士が、両腕を広げる。
「……確かに」

「戦闘指揮官!!」
 レッツが、茶金癖毛の戦闘指揮官に抗議の声を上げた。

「行くぞ! ツンデレ、筋肉、内気」

 出て行く竜斗たちに、レッツの嘲笑の声が飛ぶ。
「フンッ! オチコボレなど初めからいらんわ!!」

 ビクッと身を震わせるレイフォンの緑髪(あたま)をポンポンと叩いたセラが、閉じた扉に中指を立てた。


 ポケットに手を突っ込んでフラフラと歩き出す竜斗を、セラが呼び止める。
「ねぇ、ちょっと、あんた。
 本当に、良いの?」
「なにが?」
「何がって……勝手に出ちゃったことよ」
「ああ」
「なんでよ?」
「直感」
「……直感て」
 呆れるセラに、竜斗が振り向いた。
「ツンデレ。自分たちが一筋縄でいくと思ってるのか?
 俺たちが、軍の訓練を受けたところで、平凡な一般兵になるどころか、落ちこぼれるだけだろが」
「……うっ」

「見事に癖のある連中が集まったなぁ。
 俺も含めて」
 苦笑を浮かべた竜斗は、4人しかいない通路で、呼びかける。

「メイドさん」

「「「?」」」
 疑問を浮かべるセラ、アーサー、レイフォンを無視して、話しかける。
「どこか、話せる場所ないか?
 人気の無いところが良い」

「中庭のテラスなどが、良いかと存じます」
 さっきまで誰もいなかったはずの三人の真後ろから、濃紫の髪のメイドが返事をした。

「うわっ!!」
「ウヌッ!」
「!!」
 サラが大きく飛び退さり、アーサーがメイスの柄を握り、レイフォンが眼を丸くした。

 一人、竜斗は驚かず、片手を上げる。
「ありがとう。メイドさん」

「いえ、これもメイドの勤めですので」
 メイドが、完璧なお辞儀をして見せた。





「行くぞ! ツンデレ、筋肉、内気」

 出て行く竜斗たちに、レッツが嘲笑を飛ばす。
「フンッ! オチコボレなど初めからいらんわ!!」

 閉まった扉を見、レッツはやれやれと首を振った。
「まったく、困ったもんですな。
 勇者の自覚がないというのも。のう、勇者」
「いや、竜斗には、竜斗の考えがあるから……」
「それを、素人の浅知恵と言うのだ……おっと、勇者に言っても仕方ありませんな。
 では、姫様。聖剣(・・)は?」

「そうじゃな。
 二人に軍の訓練を受けさせて、適正のある方に渡そうと思っておったが……。
 勇者リュウトは辞退と言うことじゃな」
 奥の椅子に座るルキア姫が、大きく伸びをした。

 軽くウェーブした、腰まである、炎色の紅の長髪。
 深い海の色のような蒼い瞳。
 瞼には、天然の薄紫のアイシャドウ。
 透けるようなという形容詞がぴたり合う白い肌。
 (べに)も塗ってないのに、濃い赤色の唇。
 華やかで(あで)やかな、艶美な美貌。
 そんな艶然とした姫が身に纏うのは、女性の体形(フォルム)に合わせて曲線を多用した細身(スマート)な、銀白色の甲冑。
 その甲冑にも細かい模様が入り、金細工で彩られている。

 まさに、美女騎士と言われ、思い浮かべる姿、そのものであった。


 立ち上がったルキア姫が、横の宝箱から、一本の剣を取り出した。
「ほら、勇者コウイチ。立つがよい。
 まあ、略式とは言え、剣の授与じゃからな」
「は、はい」

 ルキア姫は咳払いすると、口上を述べる。
「汝、勇者コウイチ・ヤナギ。
 ファーレン王国、第二後継者ルキア・エルドランド・オル・サリウス・ファーレンとして、聖剣を授ける。
 この剣は神の加護を授かり、邪を打ち払い、魔を滅する――…………うむ、面倒じゃから、以下、略じゃ」
「あの……ルキア様。それで、良いのですか?」
「シェラよ。略するからこそ、略式と言うのじゃよ」
「いえ、それは違うかと……」

「細かいことを気にするな。
 ん。勇者コウイチよ。どうした?
 不可解な顔をしおってからに」

 片手で聖剣を持ったまま、光一はこめかみを指で掻いた。
「こういうのって、普通、洞窟の奥底とか、山の頂上の岩なんかに突き立ってるものじゃないんですか?」
「それこそ、不可解よ。
 何故に、聖剣を外に放っておくのじゃ。
 誰かに盗られたり、敵国の手に渡ったりしたら、どうする。
 価値のあるものなら、国家の手で管理するのは基本じゃろう」
「……は……はあ」
 気の抜けた返事をする光一に、ルキアはポンと手を打つ。
「おおっ。そういえば、聖なる鎧もあったはずじゃ。
 番人には、話をしておく。
 後で、城の武器庫まで取りに行くがよいぞ」
「そ、そんな軽く……」

「剣での戦い方は、軍と聖騎士アリアに任せるとして、
 魔術じゃが……これも、フィーがおれば十分じゃな」
「うむ。十分じゃ。
 クククク。異世界人か。
 研究のしがいがあるのぉ」

「実に、楽しみだの」
「ああ、楽しみじゃ」
「「フッフフフフフフフフフ」」
 ルキアとマスター・フィーが不気味に笑い合った。


 低く笑いながら、教育計画(じっけん)を囁き合う二人を、見なかったことにした光一は、隣に立つ金髪緑眼のアリアに話しかける。
「アリアさん。大広間で聞けなかったことがあるんだけど……」
「何でしょう。勇者殿」
「アリアさんは、聖騎士だよね」
「はい」
「さっきの発表の時、聖騎士以外にも騎士が出てきたんだけど……えっと、精霊騎士に神官騎士に……宮廷騎士だっけ。
 それって、何か違いでもあるの?」
「騎士の種類ですか。
 そうですね。一言で言えば、所属が違います。

 まず、普通、騎士と言えば、軍属の騎馬兵を指します。
 戦場で真っ先に戦うのが彼ら。

 次に、神官騎士。これは、神殿所属の騎士たち。
 聞くところによると、神官騎士は刃物を武装してはいけないなど、幾つか戒律があるそうです。

 それから、アリエルさんら、精霊騎士。
 精霊騎士は、精霊魔術を駆使し、精霊の巫女を専属で守護する騎士団です。
 
 宮廷騎士。これは、王宮を護衛する騎士たち。
 全て貴族階級の人員で構成されてますので、貴族騎士とも呼ばれますね。

 それと、私の聖騎士。
 私たちは王族直下の騎士団です。
 魔術と聖光魔術を使いこなすことから、昔は聖魔騎士と呼ばれていたようですが、ゴロが悪いということで、いつの間にか聖騎士という名が定着したとか。
 
 ファーレン王国は、この五つの騎士団だけですが、他国には魔術騎士団や暗黒騎士団、近衛騎士団、獣人騎士団。変わったところでは、エルフだけで構成されている妖精騎士団などがあるそうです。
 それらに比べれば、我が国の騎士団の構成は、普通でしょうか」
「へぇ。色々あるんだなぁ」
「ええ、騎士団同士の諍いや確執、引き抜きなど、もう色々と……」
 何を思い出したのか、アリアが二本指で額を押さえ、金の柳眉をひそめる。

「大変そうですね。アリアさん」
「ええ。本当に……」
 右手を頬に添えたアリアが、ホゥと吐息を洩らした。



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