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005ー勇者に なかま か゛ て゛きた!
「皆の者。準備は整った」

 何かを耳打ちされた国王が、立ち上がり、大広間に呼びかけた。
 光一の前に並んでいた貴族や富豪たちが、ざあっと波が引くように、左右の壁際へ分かれる。


「勇者殿よ。立ちなされ」
 2人が立ち上がったことを確認した国王は、厳かに告げる。
「これより、2人の従者となる者を発表する。
 尚、これは先代巫女が『精霊の儀』に従い、精霊石66個を使用して精霊占術し、聖託したものである。
 何人たりとも、異を唱えることは出来ない」

 緊張した大広間の中、静寂を破る声が一つ。
「……あの~……すいません。
 普通、勇者の仲間って、その……酒場で見つけたり、冒険の途中で見つけるものじゃないんですか?」
 光一の質問に、ルキア姫が鼻を鳴らした。
「酒場にタムロしてる兵士くずれよりも、この王宮の中の人材で選抜した方が、遙かに使えるし、確かであろう。
 なにせ、王宮勤めは、全て一流ばかりじゃからの。
 それに、冒険の途中と言うが、理想の人材に会わなかったらそれまでじゃ。
 魔王と戦うのに、仲間探しなどしている悠長な暇などないわ」
 姫に正論を吐かれ、押し黙る光一。

 ……でも、勇者物って言ったら、冒険の途中で仲間を集い、友情、努力、勝利が基本だと思うんだけどなぁ。


 黙った光一を、納得したものと解釈した国王が、羊皮紙を広げた。

「勇者コウイチ・ヤナギの従者を告げる。
 第一従者、巫女 シェラ・エスティン・ウィンデネル・フェリアース」
「え?」
「どうした?」
「は、はい!」
 光一と竜斗を召喚した水の神殿の巫女が、吃驚したように、返事をする。

「前へ」
「は……はい……」
 大広間の明るい光の中、シェラの青い髪が自ら光るように輝き、可愛い顔を緊張に染めて、光一の前に立った。
「よろしくお願いしますわ。
 勇者コウイチ様」
「うん。俺の方こそよろしく。
 シェラさん」


「第二従者、聖騎士 アリア・オル・クインセル」
「はっ!」
 金の髪を靡かせ、白い甲冑に身を包んだ女騎士が颯爽と歩いてくる。
 秀麗な美貌に、エメラルドのような緑の瞳。
 背筋を伸ばして歩く姿に、男女から感嘆の溜息が洩れ出た。

 光一の前に立ったアリアが敬礼する。
「聖騎士アリア・オル・クインセル。
 ただ今を持って、勇者殿の指揮下に入らせて頂きます」
「あ~~、そんなに固くなくても良いよ」
「上司と部下の境は、はっきりとさせておくべきだと思います」


「第三従者、術師 マスター・フィー」
「「「おおおおっ!!」」」
 大広間に、どよめきが起こった。

「ど、どうしたんだ?」
 光一が訊くと、シェラが小声で返す。
「この国一番の魔術師です。
 魔術だけでなく、精霊術から死霊術までなんでも使えるという噂です」
「噂ではありゃせん。真実じゃ」
「ひゃうっ!」
 真後ろから訂正がかかり、シェラが飛び上がった。

 ストレートの銀髪を腰まで伸ばし、チャイナドレスのような服を着た、艶やかな美女がひらひらと扇子を振る。
 紫の瞳のマスター・フィーが、片目をパチンと瞑った。
「ま、よろしくたのむぞよ。
 勇者コーイチ」
「……は……はい……」
 妖艶な絶世の美女のウィンクに、光一は赤面した。


「第四従者、精霊騎士 アリエル・フューマ・シルフィ・フィンネル」
 胸の前で手を組み、何かを一心に祈っていた15、6のピンクの髪の少女が、パアッと顔を明るくした。
「はいっ!!」
 大きな声で返事をすると、真っ直ぐ走ってきて、シェラに抱きつく。
「巫女姫様。私も選ばれました~!!
 これで、これからも、巫女姫様の護衛を続けられます!!
 よかったです~~」
 アリエルは、シェラに抱きついたまま、グスグスと泣き始めた。
「ちょ、……ちょっと、アリエル。
 勇者様の前ですよ。
 ちょっとは自重しなさい」
「だ、だっ゛でぇ゛~」
 聖騎士のアリアがハンカチを差し出すと、涙を拭いてから、ズビーッと鼻をかむ。

「アリエル、コウイチ様にも一言」
「はい。このアリエル。
 命に代えましても、巫女姫様をお守りする所存でございます」
「わたくしを守ることを所信表明して、どうするというのです」
「世界は巫女姫様を中心に回っておりますゆえ」
 突然、目の前で始まった漫才に、コウイチは目を白黒させていた。

「勇者コウイチの従者は、以上の4名」

 国王の言葉に、その場に居た者たちから歓声が上がる。
「最強の布陣じゃないか」
「これなら、魔王にも勝てるかもしれない」
「マスター・フィーが居れば、楽勝だろう」
「ドラゴンバスターの姫様は入らなかったようだな」
「これで、姫様が入ったら、勇者はいらないでしょう」
「なるほど」
 会場のあちらこちらから、そんな声が聞こえてくる。


「コウ。どうやら最強のハーレムメンバーみたいだな」
 茶化す竜斗に、光一は眉をしかめた。
「止めろよ。そういう言い方。
 ハーレムじゃなくて、これから、魔王を倒す仲間だ」
「仲間ねぇ。
 なんつーか、すでにレベル99の仲間を揃えたって感じだな」
「低いレベルから、ともに成長していくっていうのが王道なんだけどなぁ」
「ゲームと現実の違いだろ。
 まあ、現実(ここ)異世界(ファンタジー)だけどな」





「次に、勇者リュウト・カミシロの従者を発表する」

 国王が新たな羊皮紙を広げ、光一が竜斗に、こっそりと話しかける。
「強い人が来ると良いな」
「お前の従者みたいのが来たら、俺が困る」
「なんで……?」
 竜斗が苦笑した。
「全員が、エースの4番じゃ、戦略も何もあったもんじゃないんでね」


「第一従者、宮廷騎士 セラ・オル・ランセル」

「へ?」
 大広間後部で自分には関係ないとばかり、料理を食べていた、赤に近い金髪の少女が、口から唐揚げを落とす。

「わ、私?」
 自分を指さす、腕甲と肩甲と胸当てに鉄板入りブーツの簡易鎧を纏った16、7歳の女騎士に、国王が頷いた。
「前へ出よ。宮廷騎士ランセル嬢」
「は……はあ……」

 料理を盛った皿を、軍属の女騎士に渡し、前に行くセラへ、騎士の一部から野次が飛ぶ。
「あら、成り上がり騎士様が、ご出陣よ。
 盗賊勇者の従者って、すっごく、お似合いだわ」

 セラは、嘲笑を浮かべる金髪縦巻き毛(ロール)の女騎士と、その取り巻きを睨みつけた。

「……シャクティ」
 両腰に1本ずつ、計2本の細身の剣を腰から吊るしているセラは、右腰の細剣の柄に手をかけた。

 殺気立つセラに、国王の叱責が飛ぶ。
「とくと前へ出よ。騎士ランセル!!」

 喉の奥で唸ったセラは、ばっと振り返り、歩き出した。

 赤に近い金髪を靡かせ、緑瞳の吊り目気味の少女が、颯爽と歩く。
 容貌は清華で、十人いれば十人が美人と言うだろう。
 吊り目気味の美少女が、眦を決していると、何やら凄みがあった。

 竜斗の前まで来たセラは、じろりと睨み、
「セラ・オル・ランセルよ」
 それだけ言って、腕を組んで押し黙る。
 言葉を叩きつけられた竜斗は、何やら面白そうな笑みを浮かべていた。


「第二従者、神官騎士見習い アーサー・レイガスタ」
「ウム」

 神官騎士たちから、はっきりとした笑い声が沸き立った。

 甲冑姿の神官騎士たちの間から、メイスを腰から吊り下げ、革鎧のみを纏った偉丈夫の男が現れる。

 金の短髪に、青い瞳。
 英雄としてギリシャ神話に出てきそうな筋肉質(マッチョ)な青年だった。
 のっしのっしと効果音が鳴りそうな足取りで竜斗の前まで歩いてくると、二の腕を曲げて、力こぶを作る。
「ワシの名は、アーサー・レイガスタ。
 筋肉ともどもよろしく頼む」

 アーサーは、すかさず|右足を一歩前に出し、鳩尾に手を回して、力を込める《サイドチェスト》。
 白い歯がキラリと輝いた。
 胸の革鎧がはちきれそうなほど、盛り上がる。

「なるほど、筋肉か」
「ウム。全ては筋肉の思し召しよ」
「そうかそうか、筋肉か」
「いかにも、筋肉だ」

「「ワハハハハハハハハ!」」
 竜斗とアーサーが笑い声を上げた。

 その横で、セラが胡散くさそうな眼を二人に向ける。



「第三従者、宮廷魔術師 レイフォン・アルス・フェンリル」

 今度は、会場中から笑い声が上がった。

 フードを被った集団から、水色のフードを被った小さな人影が出てくる。
 手には身丈程もある大きな杖を持っていた。 
 バランスの悪い木製の杖(ウッドスタッフ)を持ち、よたよたと歩く小柄な人物に嘲笑の視線が向けられる。
 その視線に気圧されるように、少女はよろめき転んだ。

 大広間中に響く笑い声の中、慌てて立ち上がった少女のフードが落ち、顔が露わになる。

 緑髪のボブカットに、金の瞳。
 可憐で優艶な、優しげな美貌。

 一身に笑い声を浴びた少女は俯いて、立ち止まってしまう。

 竜斗とセラが、同時に飛び出し、少女に駆け寄った。
「ほら、杖を貸せ」
「行くわよ。魔法使い」

 セラが少女(レイフォン)の手を引き、魔法杖を肩に担いだ竜斗が周りに睨みを利かせながら、壇上まで歩き出す。

「……ご、ごめんなさい」
 か細い声でレイフォンが謝った。
「いいって、いいって」
「あんたも、オドオドしない。
 こんな奴らの視線なんて跳ね返しなさい」
「そうそう、ツンデレの言う通りだぞ」
「ツンデレ? 何よ、ツンデレって」
「まあ、基本だな」
「基本? まあ、褒めてるんなら、それでいいわ」

 3人が壇上に上がった所で、国王が締める。
「勇者リュウトの従者は、以上3名とする」

 会場中から、クスクスと嘲りの笑い声が洩れ出した。
「あれじゃ、勇者コウイチの引き立て役ね」
「各所の厄介者を体よく省いたんじゃないか」
「全員、そのまま、クビにするつもりだろう」
「なるほど、国王もよく考えましたな」


 竜斗は、セラ、アーサー、レイフォンを見回した。
「俺が、上白竜斗だ。
 よろしくな。ツンデレ、筋肉、内気」

「だから、何よ? ツンデレって」
「ウヌ。いかにも、筋肉である」
「内気……ですか……、いえ、確かに内気ですけど……」




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