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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第三章 ナガレ冒険者としての活躍編
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第二〇話 レベルアップ

「やったわナガレ! レベルが上ったわ! 10よ10! 二桁達成よ!」


「よかったですねピーチ」


 くるくると踊るように喜びを表現するピーチが微笑ましくもあるナガレである。


「う~ん、でも不思議なのよね。いつも攻撃力なんて殆ど上がらないのに、今回は結構上がったのよ」


(杖で殴り始めたからでしょうね)


 もしかしたらこのままいけば、魔法よりも杖で殴るほうが得意な魔術師になるのではないだろうか、などとも考えてしまうナガレである。


まぁ何はともあれ、これでベアールの身が危険に晒されることもないであろう。

 ナガレとピーチは、ベアグリーから核と両耳(念のため)を切り離し、更に素材として役に立つというベアグリーの毛皮も剥ぎ取り魔核と一緒に魔法の袋へ放り込んだ。


 ベアグリーは目を潰してしまえば即死する。それ故ナガレは他を傷つけず、ピーチに目だけを潰させるやり方を取らせた。 

 毛皮が素材として売却可能である故、余計な傷はつけないほうが良い。


 魔核を取れば基本消滅してしまう魔物だが、魔核の近くにさえあれば消え去ることはない。

 ちなみに素材として利用する場合はこの仕組みを利用し、魔核を粉末状にして塗布する事で、素材として役立てているようだ。


 そしてナガレはピーチとふたり帰路につく。

 どうやらピーチはレベル10になった事がそうとう嬉しいらしく、帰りは行きに比べると足取りが軽かった。

 やはり現金なものだなと思いつつも、ナガレは街へと足取りを早めた――






◇◆◇


「本当にありがとうございます」


 街に戻り、先ずは依頼者であるベアールの妻のところに顔を出し弁当を届け終えたことを伝えた。

 何か報告に来たほうが申し訳なくなるぐらい感謝されたので、ナガレはナガレでベアールの好意でお弁当をご馳走になった事を告げる。


「大変美味しかったですよ。奥様はお料理が上手ですね」


 柔らかい笑みを浮かべつつ、ナガレが素直な感想を伝えると、ぽっ、と頬を染めながら喜んでくれた。

 やだ、私主人というものがありながら、などという声も耳にしたが、そこは華麗にスルーする。

 しかし何故かピーチの視線が冷たい。


「ではこれで。また何かありましたらギルドまで――」


 サインを受け取り、ナガレとピーチは辞去しギルドに向かった。

 本来ならこれで稼ぎは二〇〇ジェリー程度。だが、今回はそれに加えてベアグリー討伐分の報酬がプラスされる筈だ。





「え!? ついでにベアグリーを倒したですって!?」


 例によってマリーンへと依頼達成の報告に向かうふたり。

 そして事の顛末を話すと、マリーンに本日も驚かれた。


 今回は特に隠すような事でもないのか驚く声も大きい。

 それだけに、ギルドに戻ってきていた冒険者の間にも衝撃が走った。


「お、おい、あいつレベル0のルーキーだよな?」

「あぁ、昨日登録したばかりでまだDランクになったばかりのな」

「マジかよ。確か噂だとゴッフォの悪事を暴いたりしたのもあいつらなんだろ?」

「なんだよそれ、だったらレベル0ってなんなんだよ、意味わかんねぇよ」


 カウンターから少し離れた位置にある円卓にて冒険者達の囁く声が聞こえてくる。

 それを耳にしたピーチが耳を小刻みに動かし、ふふんっ、とドヤ顔を披露した。


「これが討伐証明の部位です。一応両耳を持参しました。それと魔核と素材に役立つ毛皮です。魔核と素材は買い取りでお願い致します」


「え? あ、そうね。これはすぐに査定できるわ、ちょっと待って」


 若干呆けていたマリーンも、すぐに気を取り直し査定を始める。

 確かに驚きの事態なようだが、昨日のグレイトゴブリンの事を考えれば、不可能ではないことを彼女も察したのだろう。


「はい、じゃあ今回の依頼の報酬二〇〇ジェリーと、ベアグリーの討伐報酬が五〇〇〇〇ジェリー、魔核が一〇〇〇〇ジェリーで、毛皮が二〇〇〇ジェリーで合計六二二〇〇ジェリーね……なんか凄いわね。昨日のと合わせたら冒険者の平均で稼ぐ月の収入を遥かに超えてるわよ。二日でこれって驚異的だわ」

 

 半ば呆れたように言われてしまう。ちなみに冒険者の平均月収は大体二万ジェリー程度である。

 勿論これはAランクやSランクに限定すると全く異なるようだが、つまりそれだけ下のランクで燻っている冒険者が多いということだろう。


「ありがとうございます。ところでベアグリーの討伐に関する功績はピーチにも認められますか? トドメは彼女が刺してくれたので……」


 え? とピーチが目を瞬せた。まさかナガレがそんな事を言ってくれるとは思わなかったのだろう。

 しかしナガレには昨日色々と協力して貰ったお礼もある。

 

 それにピーチは皆に馬鹿にされてはいるが、そのポテンシャルは高いとナガレは感じていた。


「そうね……それならやっぱりパーティー登録してしまえば? それなら基本的には魔物の討伐なんかもパーティーとしての功績として認められるし。ただそのかわり個人個人の査定は厳しめになるけど」


「ピーチがよければ私はそれで構いませんが、どういたしますか?」


 え? とピーチがナガレを窺うように見て。


「パ、パーティー……」


「……決めちゃったら? ナガレなら私も信頼できると思うし」


 頬杖を付きマリーンがピーチを促す。すると上目遣いにナガレをみつつ。


「ほ、本当に私でいいの?」

と問いかけた。


「勿論、良くなければこんな事はいいませんよ」

 

 ニコリと微笑んでナガレが返すと、ピーチも決意が決まったようで、じゃあ! 組む! と声を上げた。


 こうしてナガレは異世界で初めての仲間が出来たわけである。


「じゃあ、今回のベアグリーの件はナガレとピーチのパーティーで討伐したって事で報告するわね」


「よろしくお願いいたします」

「頼んだわよ!」


 そして報酬を受け取りふたりはギルドを後にした。既に時刻は午後の3時を回っていたので、依頼はまた明日探すことにしようと決まったからである。






◇◆◇


 明朝――ナガレは薄暗い内から日課の型を終わらせ瞑想に更けた後、昨晩の内から宿主に借りていた洗濯用の桶を使用し道着の袴を洗い、合気を利用した手法で脱水から濯ぎ、乾燥に至るまで終わらせた後、朝一番の湯浴みを済ませ部屋に戻った。


 ピーチが目覚めて部屋にやってきたのはそれから一時間ぐらい経ってからである。

 ちなみにピーチの場合は前日宿に戻ってから洗濯は済ませてるようである。

 乾かすのは魔法を使って上手くやっているらしい。


 魔導の第十二門には、生活用途に利用できる魔法が多いからだ。

 

「さぁナガレ! 今日から正式にパーティーとして本格的に頑張りましょうね!」


 朝食を摂り終え、妙に張り切るピーチである。

 ちなみにパーティーになったという事で、ナガレは昨日の稼ぎの半分はピーチに渡している。

 

 ナガレとピーチはそれからまっすぐギルドに向かった。





「ナガレ、ピーチ、丁度良かったわ。実はギルド長がお呼びなの。一緒に来てくれる?」


 ギルドに着くなり、マリーンにそんな事を言われた。

 そしてピーチは妙に興奮している。


「まさか直にギルド長に呼ばれるなんて~なんか信じられないわ~」


 そのまま歌でも歌いそうな雰囲気だ。

 左右に垂れた桃色の髪がリズミカルに揺れている。


「じゃあ、ギルド長の部屋は三階だから付いてきて」

 

 マリーンに促され、一階奥に見える階段から上に上がる。

 ちなみに二階には職員の休憩室があったり、資料が保管されていたりするようだ。


「ギルド長、ふたりをお連れ致しました」


「あぁそうか。入ってくれていいよ」


 なんとなくふんわりとした男性の声が扉の中からふたりの耳に届く。


 失礼致します、とマリーンが木製の扉を押し開け中に入り、ふたりも後に続いた。


 部屋はわりとこじんまりとしており、横の壁際に木製の本棚。

 正面には明かり取りの窓と、執務のために使用するような大きな机が設置されていた。

 その机を隔てた向こう側には、革張りのチェアに腰を掛けた人物。

 

 彼はじっと部屋に入ったピーチとナガレの事を見据えていた。

 この人物こそがギルド長で間違いないだろうとナガレは判断する。


 見た目には四十そこそこといった感じの壮年の男性で、癖のあるエンジ色の髪を生やし、若干面長の顔立ちをした穏やかそうな人物である。


 眼鏡を掛けていて、その奥の瞳が糸のように細いのも、そう感じさせる要因となっているのかもしれない。


 そんな彼、ギルド長は机の上に両肘を置き、顔の前で腕を握りこむように組んだ状態のまま、改めて、ようこそ、とふたりに告げ。


「私がここハンマの街でギルド長を務めています、ハイル・ミシュバーンといいます。以後お見知り置きを」


 そう自己紹介をし腕を解いた。


「ナガレ・カミナギです」

「ピーチ・ザ・ファンタスキーです」


 ギルド長に倣い、ナガレとピーチも自己紹介をし返礼する。


「ふたりともどうぞ楽にして下さい。私も堅苦しいのは苦手ですからね。それにしても噂には聞いてましたが、いや本当にふたりともお若い。にも関わらず……特にナガレ君、君は相当に面白い方のようですね」


 ギルド長のハイルはそう言ってレンズの奥の瞳を光らせた――

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