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最終話 後編

あまりにも強大な魔力の衝突に、その衝撃は嵐となって吹き荒れる。
魔力同士がぶつかって雷を生み、衝突の余波が竜巻を呼んだ。


そして、レイガルドの大地に

二人の亜神の力がぶつかりあった巨大な痕跡を残して

亜神ジェイドとエルファシアは虚空へと消えた。



「ちくしょおおおおおおお!!!」

瓦礫の荒野と化したレイガルドの大地のうえを、レーヴェの咆哮が木霊した。

「オレはまた!また同じ過ちを!あいつがオレたちのためなら簡単に命を投げ出してしまうのを知っていながら!
どうしてオレは……………うおおおおおおおおおお!!」

魂すら震わす慟哭が韻々と響く。

「いや………こんなのは嫌!………エルちゃん………エルちゃん………!」

うつろな瞳を彷徨わせて、うわごとのようにセイリアが呟いた。

「いつも!いつもそうだった!あいつだけが打開の手段を知っていて……オレはその指示に従うことしかできなくて……
あいつには見えることがオレには見えない……!何が英雄騎士だ!惚れた女すら守れねえ騎士なんざ………っ!」

衝動的に己の胸に槍を突きたてようとしたレーヴェを細く引き締まった男の手が止める。

「………カリウス………」

いつの間にか姿を消していたエルファシアの使い魔がそこにいた。
疲労の色を面差しに色濃く残してはいるが、無傷の端正な佇まいに思わずレーヴェは激高した。

「カリウス!てめえ今までどこで何してやがった!お前が……お前がいればエルは………!!」

「わかっております」

苦渋の表情を隠そうともせずカリウスははき捨てるように答えた。

「ですが、エルファシア様にはここで死んでいただく必要がありました」

「……………なんだと……?」

死ぬ必要だと……?そんなものがある人間がいてたまるか!まして使い魔のお前がそれを言うのか……!

「エルファシア様はあまりに目立ちすぎました。亜神エノクの不老不死の身体を持つ者として、そして強大な魔力と
カリスマを備えた復讐の魔女として………。たとえこの戦いがエルファシア様の勝利に終わったとしても大陸中の
亡者たちがエルファシア様の力を求めて猟犬を送ることになったでしょう。それはただエルファシア様にとどまらず
ギルドやレーヴェ様たち仲間へと及んでいくのは火を見るより明らかです。残念ながら私の手はエルファシア様だ
けならともかく親交あるお仲間全てをカバーできるほど広くはない…………」

もはやレーヴェはカリウスへの殺意を抑えられなかった。

「だからエルを見殺しにしたというのか!」

槍を正眼に構える。
許せなかった。
エルファシアの死を正当化する理屈など認めるわけにはいかなかった。
竜器たる槍が青白く輝く……心臓目掛けて繰り出された神速の突きをカリウスは己の右手を犠牲にすることで
かろうじて防いだ。

「主の死を容認する使い魔の罪、確かに万死に値しましょう。なれど転送されたエルファシア様をお迎えするまで
しばしの間お待ちくだされ」


………今さらりととんでもないことを口にしやがらなかったか……?


「カリウスさん………今、エルちゃんを転送したと言ったように聞こえたのだけれど………」

「ええ。妖魔の領土の奥深くですがそこに予備身体を保管してあるのですよ。もう未盗掘の工房は妖魔の領域
にしか残っておりませんので………」

レーヴェとセイリアはお互いに顔を見合わせた。

「エルちゃんの身体って……何体もあるものなの……?」

心外な!という顔をしてカリウスが答える。

「エノク様の魂の器たる魔術身体が1体しかないわけがないでしょう!だいぶ少なくなりましたがまだ3体は保存
されております。もっとも転送装置はフリギュアにあったものが最後でしたので間に合わせるのに苦労しましたが
…………」

「それじゃレイガルド城に入ってからカリウスさんが見当たらなかったのって…………」

「もちろん転送の準備をしておりましたが何か…………?」

レーヴェとセイリアの声が見事に重なる。



「「そういうことは早く言えええええええ!!」」







眠い………
ずいぶん長く眠っていたような気がする。
長い夢を見ていたような…………
泣きたくなるくらい哀しくて、泣きたくなるくらい幸せな夢だったような気がする………

意識は夢とうつつを行き来しながら
遠くから聞こえる喧騒を伝える………騒がしいな……私はまだ寝ていたいのに………





「エルの処女はオレがもらったあああああ!」

上級妖魔が手も足も出ずにレーヴェの槍に串刺しにされる。

「エルちゃんを最初に孕ませるのは私よおおおおおお!」

セイリアの禁呪を食らった妖魔が数千単位で声もなく塵と化した。

「お子様の名づけ親の権利は譲りませぬぞおおおおおおお!」

疾風と化して駆け抜けたカリウスの周りからポロポロと妖魔の首が落ちて赤い花が咲き乱れた。

「魔王の配下四天王の城がこんなにあっさり抜かれるなんて……こいつら人間じゃねえ!」
「つ、強すぎる………!」

「「オレ(私)とエル(ちゃん)の再会を邪魔しようってえ命知らずはかかって来やがれえええ!!」」




背筋をゾッとするような悪寒が走って私は目を覚ました。
なんだろう……?なんだか激しく貞操の危機を感じたような………

目覚めて見れば暗い箱の中にいるらしいことがわかった。
前にもこれと同じことがあったような………
私の目覚めを感知したのかギギギ…と軋むような機械音とともに箱の蓋が開いていく。



「……………………いったいここは……………」



                                                                       完
高見梁川の心象世界
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