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「アトモスフィア」 佐藤健志 短編集 作者:佐藤 健志
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47 フォギー


カレイドスコープ。

七色にも十四色にもかわる景色。くるくると回してわたしはひととき悦に入る。
この瞬間だけは全てをこの手に掴んだ気がするから。夢も希望も世界さえも。
もちろんそれは思い込みにすぎなくて。でも満足だからいいの。

世界にはどれだけの色があるのだろう。

色はマボロシだという人もいる。
ただの波だと。電気信号が認識させているにすぎないと。
少し受容体を狂わせれば、景色など容易に変わると。

つまらないことを語る輩だなと、わたしは鼻で笑う。

わたしが美しいと思ったなら、それは真実。
美しい色に取り囲まれているこの一瞬が永遠であるように。

日常を忘れて、色にもたれるの。

廃墟と化したハイウェイを、カレイドスコープとともに歩いてゆくの。
白い靴下で。
白いスカートで。白いブラウスで
白くなってしまった髪はみつあみにして。

少女だからってバカにしないで。女は生まれたときから女だってこと、あなた忘れているでしょう?

家を飛び出してもうずいぶんたつけれど、やっぱりわたしは女のまま。
ほら、カレイドスコープの向こうの景色にもう一人のわたしがうつっているように。
輝いた季節が向こう側にしか残っていなくても。

狂っていると思うのならかまわないわ。わたしを狂人扱いすればいい。

カレイドスコープに閉じ込められた女のことなど忘れてしまえばいい。

遂にわたしを捕まえ損ねたからって悔しさに捨て台詞を残していいのよ。

「フォギー、オレに気づけよ」

この掌の円柱から覗くラウンドスケープ、所詮あなたには理解できないのだから。

「フォギー、オレだよ。フォギー」
呼んでいるのは誰?


朽ちてしまったハイウェイの遠景に点が見えるわ。だんだん大きくなっている。
気づいてあげるわ。あなたのこと。



廃墟だと思っているのは彼女だけ。ハイウェイは常に整備され、高速で車が行き来している。
光は粒子であり波。
色は水蒸気によって偏光する。ごく小さな水の粒に屈折し反射し、人の目には何らかの物質として認識される。
急激に低下した気温により発生した「霧」は人の視界を色で奪う。大抵は白で。

彼女のカレイドスコープに捉えられた「点」は逃れるすべを持たない。
遠い昔、苦しみから逃れるために靴も履かずに飛び出した少女のことなど誰も覚えてはいない。
万華鏡一つを手にハイウェイに飛び出したっきりの、白いスカートの少女のことなど。
フォギーと呼ばれていた、ある人物のことなんて誰も。

「点」だった4輪の乗り物はなすすべもなくゆくべき方向を見失う。右へ左へ。


フォギー

フォギー


カレイドスコープ




今日もフォギーに飲み込まれる男がひとり。
あと3話、お付き合い下さい。ひきつづき、お題を募集しております。どうぞよろしく。
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